農トピ

農業や科学に関する話題やニュースを紹介

ノーベル賞受賞で相談殺到 誤解してほしくない免疫療法

   

オプジーボ

昨年は高額なその薬価が話題となったオプジーボだが、ノーベル賞により夢の薬として注目を浴びることに

日本中がお祝いムードに包まれた京都大学特別教授、本庶佑(ほんじょ・たすく)さんのノーベル医学生理学賞受賞。

その研究成果は、免疫療法の一種であるオプジーボなどの「免疫チェックポイント阻害剤」開発に結びつき、がん治療に新たな道を開いたと華々しく報じられた。

ところが、研究成果や受賞会見の報道で、患者を含めた一般の人に、免疫療法に対して危うい誤解が広がっているのではないかという懸念が患者団体や医療者からあがっている。(BuzzFeed News)

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/nobelprize-opdivo


 

10月1日に発表されたノーベル賞に関しての話題
ノーベル賞で話題になったオプジーボなどの「免疫チェックポイント阻害剤」は、がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを外すことで免疫細胞ががん細胞への攻撃力を強める仕組みである

受賞につながった研究はがん細胞が免疫から逃れるためのブレーキ役となる「PD-1」という分子を発見し、マウス実験でこの分子の働きを抑えることで免疫が活性化し、がんへの攻撃力が強まることを証明したという内容であった

これまでの抗がん剤などとは全く違うアプローチであり、悪性黒色腫など一部のがんに対しては実際に効果があることが認められている

しかしこの記事ではその効果があたかも万能薬のように報道されることに対して懸念を示している

画期的な薬だが、万能薬ではない

「免疫チェックポイント阻害剤は、これまでの治療薬と全く違う作用で、初めて従来の抗がん剤の効果を上回った画期的な薬です。再発・進行がんへの適応がほとんどですが延命効果も明らかになり、悪性黒色腫では手術後の投与で治癒率が上がることもわかっています。今後のがん治療薬で中心的な役割を果たす可能性があるのも確かです」

「しかし、よく効果が出る人は2割程度で、皮疹や甲状腺機能の悪化、免疫に作用するのでリウマチやギランバレー症候群のような自己免疫疾患など重い副作用もよく見られます。期待を持たせ過ぎるのは危険です

「免疫チェックポイント阻害剤は効果が出るように使うのが難しいですし、副作用に対応するためにも、製薬会社が施設要件や医師要件を定めています。こうした要件を満たさないクリニックでは適正な使い方もしませんし、副作用が起きた時の対応もできません。患者を食い物にしており非常に無責任です」

受賞直後のNHKニュースをみていると、オプジーボにより延命し、現在も生存している方の体験談が放送されていた
また、肺がんで(肺がんに対する効果は認められ保険適用となっている)オプジーボにより命を救われたという森喜朗元総理の話題にも触れていた
これを見たがん患者やその周囲の人が免疫チェックポイント阻害薬に多くの期待を寄せるのは当然だろう

そして保険対象外の(=今のところ効果が確認されていない)がんの患者は病院でこれらの治療が受けらないことになれば、超高額な自由診療による免疫チェックポイント阻害薬による治療を望む人も出るかもしれない
また、免疫というワードだけが独り歩きすれば怪しげな免疫療法などに走ってしまい既存のがん治療を投げ出す人も増えてくるだろう

がん患者の治療を日々行う日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授で腫瘍内科医の勝俣範之氏によれば受けてはいけない免疫療法として以下の3つを挙げている

  1. 保険がきかない自由診療であること
  2. 患者の体験談が載っていること
  3. 「副作用が少ない」「がんが消える」などネットで効能効果をうたっていること

今回のノーベル賞にまつわる免疫チェックポイント阻害の仕組みが解明されれば今後がん治療の世界が大幅に進化する可能性はある
しかし現在できることとできないことを正確に報道し、過度の期待を煽ることのないように細心の注意を払わなければならないだろう


 

引用した記事の中にある二つの参考ページは、がん患者を近くに持つ方には一読の価値があるので紹介したい

末期ガンを周囲に知られて起こる「優しい虐待」【幡野広志】(PHPオンライン)

「もっといい治療法があるわよ」という知人から心を守るには(Buzzfeed news)


 

 - サイエンス