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大分県の水菜から基準値の5倍の禁止農薬が検出されたという記事について

   

おそらく今回使用されたトレボン乳剤

おそらく今回使用されたトレボン乳剤
農協経由ではクミアイトレボン乳剤として青いラベルがなじみがある

臼杵産の水菜から基準値超える農薬が検出

大分市内の直売所で販売された臼杵産の水菜から基準値を超える残留農薬が検出され県が生産者に回収を命じました。基準値を超える残留農薬が検出されたのは今月11日から18日にかけて大分市内の直売所で販売されていた臼杵産の水菜です。大分市保健所が定期検査を実施したところ、国が定める基準値を0・04ppm上回っていたうえ、水菜への使用が禁止されている種類の農薬が使われていました。直売所には24袋が出荷されていてこのうち8袋が既に販売されていました。県によりますとこの水菜を食べても健康被害の恐れはないということです。県は、生産者に商品の回収を命じたうえで再発防止を徹底するよう指導しています。(OBSニュース)

http://www.e-obs.com/news/detail.php?id=01220040043&day=20180122


 

大分県内の直売所で販売された水菜から国の基準の5倍の農薬が検出されたという話題
すでに消えているがNHKニュースによると以下の内容で報道されている

大分市の農産物直売所で販売されていた水菜から、国の基準を超える量の農薬が検出され、
県は、生産者に回収を命じました。県によりますと、問題の水菜を食べても
健康に影響はないということです。
問題となっているのは、臼杵市の生産者が今月15日に大分市内の直売所に出荷した水菜です。
県によりますと、大分市保健所が調べたところ、キャベツやレタスなどの害虫の駆除に使われる
「エトフェンプロックス」という農薬が、国の定める残留基準値の5倍の量に当たる
0.05ppm検出されました。

エトフェンプロックスが検出されたということであるため、おそらく使用された農薬はトレボンであろう
合成ピレスロイド系の殺虫剤であり、多くの作物で広く使用され、比較的人体にも安全とされもメジャーな農薬である

このニュースを見たときに国の基準の5倍も検出されているのに毎日食べても人体に影響がないとはどういうことだと思う方も多いであろう
ネットでは安全係数が100倍ほどかかっているからなどといったコメントもあるがこれは間違いで、今回の問題は現在の農薬の残留基準値がポジティブリスト制であり、水菜がマイナー作物であることによるものである
この制度では残留基準値の試験や参考事例がない作物に対してはすべての農薬で0.01ppmが残留基準値となるよう定められている
水菜のような出荷量の多くない作物においては農薬メーカーも積極的には農薬の残留についての試験などは行わない
そのためエトフェンプロックスは水菜に関しては最低基準値の0.01ppmが基準値となっている

ところが農薬の使用登録のある作物を見るとトマトやキャベツで2ppm、ピーマンやみつばなどでは5ppmが残留基準値となっている
今回水菜で検出されたのは0.05ppmであるため、5倍の基準値超過といっても実質的には健康被害は考えにくいという判断である
NHKが基準値の5倍と書いてしまったので見出しだけが先行してしまった感があるが、それを受けてか今回引用したOBSニュースでは0.04ppmの超過という表現になっている
試験報告があるか無いかで水菜の100倍の値が残留していてもみつばでは基準値内ということがありうるのである

ただし、健康被害のあるなしに関わらず登録のない農薬が使用されていたことは農薬取締法に違反する行為であり、厳しく処分されるべき事例である
昨今では農薬の使用に関しては消費者から常に厳しい目を向けられている
農業者が登録基準を遵守し、適切に農薬の使用を行っていくことがこれに対する信頼を培っていくことになる

農業で生計を立てている者にとってはこの辺りは死活問題なので自分の作物に対する農薬の登録や使用基準に関してはしっかりと頭に入っているのだが、直売所に並ぶ商品に関してはこの辺りがうやむやに運用されていることがあるのは残念なことである
今回の例でも出荷した生産者は登録がないことを知らずに利用したとなっている

農トピらしく農薬の成分について注目すると、エトフェンプロックスは先に述べたように合成ピレスロイド系の殺虫剤である
トレボンのほかにベルミトールという商品もあり、こちらは業務用殺虫剤としてゴキブリや南京虫などの対策として飲食店などで使用されているようだ
10倍で家具や寝具に噴霧したという口コミも見られるが、7%溶液の10倍なのでトレボン(20%)を農業で使用する1000倍液より3倍以上濃い濃度で散布していることになるのは考えさせられるものがある
ピレスロイドは蚊取り線香などの成分にも使われており、昆虫や両生類、爬虫類などにしか存在しない神経系伝達系を阻害する作用機構から、ほ乳類や鳥類には安全な農薬とされ、多くの家庭用殺虫剤に利用されている
ただ合成ピレスロイド剤の中にもシフルトリン(殺虫スプレーなど)、テルフトリン(フォース粒剤など)、ビフェントリン(テルスターなど)といった劇物や毒物に指定されているものもあるため一概には言えないということにも注意が必要である


成分は農薬と同じだが、乳化剤などのその他の成分が家庭でも使えるように調整されている
家ダニに悩む方には効果があったというコメントもあるため一度覗いてみてはいかがだろうか

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