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脳炎で死亡したバングラデシュの子ども13人、原因は殺虫剤 研究

   

ライチの成分自体に毒性があるとも言われているが、今回の事件は農薬成分が原因のようだ

ライチの成分自体に毒性があるとも言われているが、今回の事件は農薬成分が原因のようだ

 

【7月25日 AFP】バングラデシュで2012年に13人の子どもが死亡した原因は、80か国以上で使用が禁止されている殺虫剤エンドスルファンだったとする論文が24日、発表された。
米医学誌「アメリカ熱帯医学衛生学誌(American Journal of Tropical Medicine and Hygiene)」に掲載された論文によれば、子どもたちは全員、果実のライチを食べ、症状が現れてから20時間以内に脳炎で死亡していた。
急性脳炎症候群(AES)に起因する同様の死亡例は隣国インドのライチ農園でも確認されている。ただし、英医学専門誌ランセット(Lancet)に掲載された分析結果は、死因がライチの種と果肉に含まれる天然由来の毒素だとしていた。(AFP通信)

http://www.afpbb.com/articles/-/3136896


 

ライチを食べて急性脳炎症候群(AES)となり死亡者が出たという事件の原因が農薬ではないかという研究論文が発表されたという話題
混乱を招くようだが、今回バングラデシュの事件での原因は農薬が疑われており、別のインドでの事件の原因はライチの種に含まれる天然成分がAESの原因ではないかと指摘されている

さて、エンドスルファンは日本でも、「チオダン」や「マリックス」などという商品名の殺虫剤として利用されていたが平成22年に登録が失効し、現在は使用禁止農薬となっている
有機塩素系殺虫剤としてかつては多くの国で利用されていたが人畜毒性、魚毒性を考慮して使用禁止になった国が多く、現在でも利用されている国はあまり多くないようだ
水質汚濁性が問題視されストックホルム条約でも工業用エンドスルファンが禁止物質に追加されている(2011年)

植物への浸透移行性はないものの、その残留性から輸入農産物などでよく検出される農薬成分となっている
日本でも平成16年に自家製豆腐から多量のエンドスルファンが検出される食中毒事件が起こっており、この時は16名が嘔吐、頭痛、めまいなどの症状を起こしていたようだ(この時点ではまだ日本では禁止農薬ではない)
参考:東京都感染症情報センター

また、28年2月には埼玉県で魚200匹が死亡する事件が起こり、周辺の水域からエンドスルファンが検出されたという話題もあった
参考:埼玉県 江川において魚のへい死事故がありました

最近では輸入養殖サーモンの餌に殺虫目的で混入されているということで一部話題になったが、こちらでは輸入検疫での残留基準を超過した例は見られないようだ


 

 - サイエンス, 農薬