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農地バンクてこ入れ 負担なし基盤整備 法改正へ 中山間地に配慮 集積進まぬ中国地方

   

農地バンク

農業改革の3本の柱として登場した農地バンクの今後は

中国地方で、条件不利地域の集積が進まず農地中間管理事業の実績が伸び悩んでいる。
広島県は、2016年度の機構から受け手への転貸実績を約1000ヘクタール(前年度1187ヘクタール)、うち新規を約300ヘクタール(同473ヘクタール)と見込む。岡山県は、昨年4~12月の転貸実績は300ヘクタール弱と、前年度の半分にとどまる。島根、山口両県も実績は下回る見込みだ
受け手が耕作しやすいよう、基盤整備を進められるかが鍵だ。政府は今国会で、農地中間管理機構(農地集積バンク)が借り入れる農地は、農家の費用負担や同意なしで整備できるよう法改正を目指す。(日本農業新聞)
https://www.agrinews.co.jp/p40076.html


 

中間管理機構の実績が伸び悩んでいるという話題
この事業は今後10年間で、担い手の農地利用が全農地の8割を占める農業構造を実現(農地の集積・集約化でコスト削減)をうたい2014年3月から開始された制度である
法整備・予算措置・現場の話合いをセットで推進する農地中間管理機構の整備し、貸付希望者が機構に農地を貸し、機構が希望する借り手の農家に貸し出すという仕組みになっている

個人間の貸し借りではなくなるため安心感も高く、貸し借り中心なため売買まではしたくない人達からの利用が進むと考えられていたようだ

ただ誰が借りるか分からないこと、条件不利地や周囲の中で一件だけ貸したいなどの農地が集積できない状況では借り手がつかないこと、また10年以上という貸付期間などの問題もありなかなか目標通りには集積が進んでいないようだ
農水省は農地バンクの成約率の高さを(8割以上)数字に挙げているが、これは実際には農地バンクが引き受ける農地がある程度貸し手がいる状態の土地しか借り受けないからに過ぎない
毎年14万haの集積を目標としているようだが初年度は2.4万ha、27年度は8万haと伸び悩んでいるようだ

これの対策として政府は今国会で土地改良法改正案の成立を目指しているというのがこの記事である
これは土地改良事業を行う場合、参加資格者の3分の2以上の同意が必要と定めているがこれを「機構が借り入れる農地で、農業者負担も求めないことを条件に、同意を不要とする」という内容である
トピ主はあまり土地改良事業に詳しくはないが、個人の所有であり機構の借入という状態の土地を地権者の同意なしに改良可能にするという法案はかなり踏み込んだ内容である
条件不利地ほど農地を手放したい人や不在地主が多く、工事費の負担に難色が出るし、名義不明や所有者と連絡の取れない農地が少しでも含まれると現状では基盤整備の対象にできないという問題は解決するかもしれないが、10年後の貸与期間終了後に何らかのトラブルが発生する可能性は大いにあるし、悪用すれば同意しない方が負担なしで土地改良可能という風にもとれる内容である

農地バンクに集積が進まない理由として固定資産税の低さ、農地の転用や売却への期待、農地を他人に使わせる抵抗感があるとされている
協力金などの予算が減少していく以上これらを解消しなければ今後目標値の達成は難しくなってくるだろう
県によれば集積に協力的だったり条件の良い土地はすでに過去2年で出尽くした感もある
農水省は予算を積み地方行政に圧力をかけるだけでよいかもしれないが、非現実的な目標数値を掲げられた市町村の担当職員には気の毒な制度である

そもそも耕作放棄される土地にはそれなりに理由がある
また農業が効率化する一方、人口が減少していることも考えれば条件が不利な農地が減少していくことは避けられない
中山間地域での農地の集積では基盤整備の事業費も莫大なものとなる
農地は農水省の職員の思い描くような一様なものではなく、それぞれの土地にあった正しい形があるはずではないだろうか


 

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