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農業資材の見える化がもたらすものは? 韓国産肥料を一括輸入、全農

   

韓国産肥料

3割以上安い韓国産肥料

韓国産肥料を一括輸入=資材値下げ、第1弾―JA全農

全国農業協同組合連合会(JA全農)は15日、生産資材価格を引き下げる取り組みの第1弾として、韓国産肥料を一括輸入すると発表した。全農は7月、農業者の所得向上を目的として、肥料や農薬などの値下げ策を具体化する方針を示していた。

今回輸入するのは、コメや麦のほか、ダイコンやキャベツなど露地栽培の野菜生産に使用できる化成肥料。大規模農家を想定し、コンテナごとの20トン単位で注文を受け付け、港湾から直送することで国産製品よりも3~4割程度割安にするという。ただ、国産に比べると水分量が多く固まりやすいため、長期保管には向かない(yahooニュース 時事通信)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160815-00000206-jij-bus_all


 

JA(全農)が韓国産肥料の取り扱いを開始するという話題

全農のプレスリリース(「担い手直送輸入化成肥料」の本格的取扱について)には

JA全農は、農家手取りの最大化、生産コストの低減に向けて、担い手生産者を対象とした安価な輸入化成肥料を本格的に取り扱うこととしました。
コンテナ単位(20トン)で生産者から注文を取りまとめて海外メーカーに発注し、港湾から生産者へ直行供給を行うことで、割安な価格設定(地域によって違いはありますが、国産同成分品対比3~4割程度安価)を実現しました。
第一弾として、韓国で製造されている1銘柄(窒素15%、燐酸15%、加里7%)を、8月26日までにJAを通じて受注し、平成28年10月上旬に、輸入、納品します(詳細別紙)。
とある

別紙の詳細によると肥料自体は20キロ袋に入っているようだが20トン単位での取り扱いであり、10トン車2台分が受け入れ可能な農業者のみが対象であるらしい
粒径は多少ばらつきがあるが粉化率は低いようだ
もともと韓国のアジア向け輸出製品であり、日本の農薬取締法に適合しているので初めに特性を掴んでしまえば通常利用に問題はないと思われる

ネットなどでは韓国製ということで批判意見も多く見受けられるが、まず水分量が多いので貯蔵性が劣るという肥料を20トン単位で使い切るように扱える農業者などは一般レベルではないのでJA扱いの農産物がすべてこの肥料を使うようになるというイメージを持つ必要はないだろう
ちなみに水分含量が少し多かろうが、重量に対しての%で有効成分を表示するので肥料分が薄いのでは?という指摘は全く見当違いである
そもそもその規模の農業者はJAで肥料を買うことはまずないと思われ、すでにJAより安価な商社系や、肥料メーカーと直接契約して取引しているところが殆どなため(その中には当然すでに韓国産肥料を利用している農業法人もある)今回の決定ではJA取り扱い縛りの中でも安価な選択肢ができた、というレベルでとらえておくべきであろう
また、もともとホームセンターなどで安価な肥料は韓国を始めとした輸入品であることも多いので今回のことで世の中の肥料情勢が一変するわけではない

さて、なぜ全農が輸入肥料の取り扱いを始めたのかという背景には、当サイトでも過去に触れてきた自民党農林部会の資材価格の見える化という圧力がある
過去に最大2倍価格差があるとして不透明な流通を指摘された全農としては農政改革の柱として資材価格の引き下げを実現したい自民党農林部会からの圧力により確実に安価な外国産資材の導入を行い、おそらくは国産の資材の価格はある程度維持していくつもりなのではないだろうか
逆に商社系や肥料メーカーなどはこの価格を提示され、競争した価格を提示せざるを得なくなるだろう

今回話題になった化成肥料だが、原料はリン鉱石やカリ鉱石、原油などほぼ鉱物から生産されている(参考:農林水産省 肥料をめぐる事情 pdf
通常で考えると寄生虫や伝染病の原因となることは考えにくい
ただ有機肥料であるが最近国産でも偽装表示肥料問題として話題になった太平物産が80億円を超える大規模な問題を引き起こしている
ある程度成分や成型のバラつきを許容することでコストダウンを実現している輸入肥料だけに品質管理はJAとしても徹底しておく必要があるだろう

水稲における肥料価格の占めるコストの割合はおよそ7%である
これが仮に30%下がったところで全体のコストとしては2%の下げということになり、大幅に経費が下がるわけではない
一方成分表示などで違反が見つかり販売価格が下がるようなことがあれば大きく利益を減らすことになるだろう
自民党農林部会が農政改革をうたうのは結構なことではあるが、農業者側からすれば数%の経費削減が大きな成果であるとは言えない
一団体に過ぎない農協を締め付けることで成果を上げたように見せるのではなく、もっと本質に沿った農政を行えるような仕組みを整えていく必要があるのではないだろうか

 

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