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(7/11追記あり) 鶏肉から基準超の抗生物質 岩手県が回収命令

      2016/09/27

Chicken_for_sale

岩手県の鶏肉の加工会社が、スーパーなどで販売するために食用に処理した鶏肉から国の基準を超える抗生物質が検出され、岩手県はこの会社に対し、問題の鶏肉と同じ養鶏場から仕入れた、およそ3100羽分の鶏肉を回収するよう命令しました。(NHKオンライン)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160603/k10010545801000.html (リンク切れ)

毎日新聞での記事


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岩手県の鶏肉加工会社が処理した鶏肉から国の基準を超える抗生物質が検出され、回収騒動となったという話題

前回の記事(http://agritopic.net/295/)で日本では対策が取られているということを書いた矢先にこの事件である
タイムリーというかなんというか…

本文によるとニチレイのグループ会社の処理した鶏肉からテトラサイクリン類の抗生物質が上限基準の2倍量検出されたため回収命令が出されたとのこと
ただしこの鶏肉はすでに関東地方のスーパーで販売されてしまった後のようで、販売店舗は調査中とのことである

テトラサイクリンは安価かつスペクトラムが広いので感染症の予防のため、家畜の飼料にしばしば混入されており、この有用な抗生物質の耐性菌が蔓延する原因の一つになっている。日本でも、幾つかのテトラサイクリン系抗生物質がこの用途に対して認可されている

ただし前述の記事での通り鶏肉では出荷するまでの7日間は投与や添加された飼料を与えることは禁止なはずであり、これが守られていればほぼ検出されないはずである

フレッシュチキン軽米の事業紹介のページによると「株式会社ニチレイフレッシュファームで生産・飼育している純国産鶏種『純和鶏』をはじめ、年間約400万羽を処理・加工しています。」とある

またこちらに鶏肉を供給している会社の一つの十文字チキンカンパニーのブログではテトラサイクリン添加の飼料は使っていないということである
きちんと基準を守っている会社からすれば起こりえない事態のために早急に事件の概要を明らかにして欲しいところであろう
余談だがこのようなときには普段からしっかり情報発信している会社はなんとなく信用してもいいかと思えるし、逆にこんな時にページも更新しないフレッシュチキン軽米やニチレイフレッシュファームの担当者は現代のネット社会を甘く見てるのではないかと心配になってしまう

可能性としては例えば外国産の輸入鳥肉の加工もしており、もともとそちらに含まれていた又は鶏肉生産者が抗生物質添加飼料と無添加飼料を取り違えてしまったなどだろうか?
記事では問題の鶏肉と同じ養鶏場から仕入れた鶏肉に回収命令とあるので後者の方が疑い深い
現代の畜産は生産履歴がしっかり追跡できるはずなので原因も遠からず判明するとは思うが関係者の苦労を考えると早急に全容解明と新たな対策の構築が望まれる
何しろ今回は事件が判明した時点ですでに販売されてしまった後なのである。健康被害が出ないことは理解できるが商品を回収しただけで済ませるわけにはいかない事件だろう

(6/8追記)

ニチレイフレッシュのページにてpdfファイルで声明が出たようです
内容は上記の十文字チキンカンパニー産の鶏肉だったとのこと
テトラサイクリンは全く使ってないという会社の社長のブログとは異なった内容となっており事件の行く末はもう少し様子を見る必要がありそうです

(6/17追記)
現在岩手県の担当課にその後の調査結果がどのようになったかを問い合わせていますが返答はまだありません
6/6以降はニチレイグループ、十文字チキンカンパニーともにこの件に関するコメントは出ていません

(6/21追記)
岩手県より回答が来ましたが、現時点では原因は特定されておらず調査は継続中ですとのこと
県では原因究明やこれにかかる改善措置について確認し、調査結果の公表を含めた指導を必要に応じて行う予定とのこと

(7/8追記)
ニチレイフレッシュのページにて
【回収終了のご報告】当社の取り扱い商品について
というpdfファイルが公開されました

内容は、回収したものと同一農場、同一日時の鶏肉を検査してもテトラサイクリンは検出されなかった
飼料工場、養鶏場、食鳥処理場他の各段階における混入可能性の調査をしたが、いずれの段階においてもテトラサイクリン類の存在、使用はなく、偶発的な原因を含めても汚染の可能性は極めて低かった
結論として回収指示があった基準値超過の原因は不明という結果であり、岩手県もこの報告を了承したとのこと

なんとも不明瞭な結果で終わってしまったこの事件である
岩手県1位の規模を持つ東北有数の食肉加工会社ということだが結局社長のブログでも事件が発生したときの1記事しか触れることはなかった事が個人的には残念である

 - サイエンス