農トピ

農業や科学に関する話題やニュースを紹介

豪州、外来種のコイに宣戦布告 ウイルス使って壊滅も

   

Cyprinus_carpio-2

鯉:海外で野生化し大きな被害をもたらす

オーストラリア政府は、淡水で繁殖した外来種のコイを壊滅させるための新たな作戦を打ち出した。コイに感染するヘルペスウイルスの放出も検討しているという。

ジョイス副首相はこのほど行った議会演説で、コイについて「底辺にすみついて泥を吸うムカつく生き物」と形容。コイを駆除するにはヘルペスウイルスを使うしかないと力説した。

同国は正式に、5月1日をコイ(カープ)を壊滅させる「カーパゲドン」の日に制定。1500万オーストラリアドル(約12億円)をかけたコイ壊滅作戦の一環として、2018年にコイヘルペスウイルスを国内の河川などに放出する可能性があると発表した。(CNN.jp)
http://www.cnn.co.jp/world/35082152.html


 

日本では食用や観賞魚として知られるコイがオーストラリアでは特定外来種として大きな被害を出しているという話題
それにコイヘルペスウイルスまで投入するとはなんとも穏やかではない見出しである

特定外来生物とは外来生物のなかで特に在来の生物を補食したり生態系に害を及ぼす可能性がある生物のことであり日本ではブラックバスやブルーギルなどが特定外来種として有名である

外来生物に侵食されるばかりのイメージであるが、外国では逆にコイ、マメコガネ、クズ、ワカメなどが在来生物の環境を脅かすものとして猛威を振るっている

kouzu

建造物をも飲み込むクズ(葛)アメリカではグリーン・モンスターの異名を持つ

 

特にコイは低温や汚れた水の環境にも強く雑食で大型化するために天敵がほとんどいなくなるという最悪な性質らしい
野生化したコイが様々な国の淡水魚に被害を及ぼし世界中で問題になっているとのこと
北アメリカでも被害は大きく五大湖への侵入を抑えるために軍が大がかかりな施設を作ったりもしているようだ(すでに住み着いてしまったようだが)

さて、コイヘルペスウイルスとはどういう性質のものなのだろうか?ウィキペディアによるとコイ以外の魚には感染しないウイルスで30℃で死滅、コイヘルペスウイルス病が発症すれば致死率100%という特徴があるようだ
かつて霞ヶ浦で養殖業者が廃業に追い込まれるほどに被害が拡大したこともあるようだがオーストラリアのような自然環境でどれほどの効果が見込めるのかは謎である
また致死率が高く特定種でしか存在しないウイルスをどのように自然環境に投入する手法があるのかも少々疑問が残る
ウイルスである以上薬剤のように分離合成できるものではない
接触は必要なく水で感染するようだが上流に意図的にウイルスを感染させた養殖場を作って排水を下流に流すのだろうか?

かつて外来種を用いて特定の種の駆除を試みた結果意図せぬ在来種に被害を及ぼした例は多い
日本ではハブ対策として導入されたマングースがヤンバルクイナやアマミノクロウサギを絶滅の危機に追い込んだのは有名な話である
薬剤や捕獲装置などとは違い生物や生物内で増殖するウイルスなどは一度自然界に放たれれば回収することはまず不可能である
今後オーストラリア政府がどのような判断を下すか注目していきたい

 - サイエンス, 農業環境 , ,