ジェネリック農薬の登録簡素化へ 17年度以降欧米と同様の簡素な手法を認める方針
2016/09/15
農薬登録を簡素化 17年度以降 ジェネリック普及 政府
政府が安価なジェネリック(特許切れ)農薬を普及するため、農薬取締法に基づく登録制度を見直すことが12日、分かった。2017年度以降、ジェネリック農薬が広く普及している欧米と同様の簡素な手法を認める方針。政府は、安全性を確保しつつ、試験費用は大幅に削減できるとみる。販売価格の引き下げにつながるが、消費者らから安全性への理解を得ることも必要となりそうだ。(2016年9月13日:日本農業新聞)
ジェネリック農薬の普及のために、農薬取締法の登録制度を現行より簡素なものとするための見直しが行われるというニュース
ジェネリック農薬なんか見たことないよ、という方もいるかもしれないが、日本で売られているラウンドアップ以外のグリホサート系除草剤はすべてジェネリック農薬なので、それを考えれば殆どの農家が一度は使用したことがあるのではないだろうか?
全農などは20年度までに10種類程度のジェネリック農薬を投入すると以前からニュース報道などで発表しているのが、これにも更なる弾みとなるだろう
(現在はジェイエース、ペンコゼブの2種)
ジェネリック医薬品という言葉はずいぶん一般的なものとなったが、まずはジェネリック農薬という言葉を農水省の用語集から引用する
ジェネリック農薬とは
当初開発した製造業者(先発メーカー)がもつ特許の有効期間(20~25年)が過ぎ、異なる業者(後発メーカー)が製造する、有効成分が同等の農薬。毒性等の各種試験データが提出され、安全性を確認したうえで、農林水産大臣により登録。
現行ではこの農薬の登録に先発薬と同程度の厳しい基準があったために登録のための試験に多額の費用が掛かり、あまり農薬の価格が下がらず一般的なものにならなかった経緯がある
欧米などでは農薬に含まれる有効成分と、製造過程で生じる不純物の量や割合(組成)を定め、この組成がすでに登録のある農薬と同じであれば、毒性試験や残留試験が不要となる
これにより日本では5%程度の普及率のジェネリック農薬だが、海外では農薬市場の約3割がこのジェネリック農薬であるといわれている
この仕組みを取り入れれば確かにジェネリック農薬自体の価格は3割ほど安くなるかもしれない
また、それに対抗するために開発費などの投資が回収できている先発薬も値下げが期待できるだろう
ただし、農業に使われる薬の場合は人間に対する薬と違って単純にジェネリックに切り替わりにくい要素もある
種類の限られるジェネリック品ばかり使用していると薬剤成分が1種類に偏ることになり、薬剤抵抗性を獲得してしまいやすいことや、農業環境の変化により25年以上も使用され続ける農薬が少なくなっていることなどがあげられるだろう
また、農業にかかる経費のうち、農薬代はおよそ2割以下といわれている
仮に使用する農薬のうち3割をジェネリックに変えたとしても、2000万売り上げのある経営だとして、実際の経費の削減分は40万円程度でしかない(2000万×農薬費の割合20%×全農薬の3割使用×価格が3割安と仮定)
大きな注目を集めるジェネリック農薬であるが、このことが農家の経営安定の特効薬になるものではないということは理解しておく必要があるだろう
個人的には同時に先発薬を開発する農薬メーカーの新規農薬開発意欲が下がらないように何らかの対策を講じてほしいものである
農業環境の変化により新規の農薬の開発は絶対に必要なものとなってくる
日本の農業の維持には新規農薬開発や、マイナー作物への登録拡大などを助成することも必要な政策となるのではないだろうか
余談だがジェネリック農薬の代名詞グリホサートだが
農耕地登録のあるサンフーロンで650円
非農耕地用だと250円が相場である(いずれも500ml、amazon調べ、すべて有効成分グリホサートイソプロピルアミン41%)
全農の扱う先発薬のラウンドアップマックスロードは1800円と非常に高価である
某農業情報交換サイトではこれを使用する人は富豪と呼ばれているようだ
トピ主はもちろん一般農家である
ぜひ富豪気分を味わってみよう