和歌山で散歩中の犬が死亡した事件でソーセージに混入された毒物とは
路上のウインナーソーセージから毒物検出、食べた犬死亡 和歌山市
和歌山市は18日、散歩中の飼い犬が路上に落ちていたウインナーソーセージを食べて死に、ソーセージから劇物のメソミルが検出されたと発表した。市は和歌山県警和歌山東署に通報するとともに、ペットの飼い主らに向けて注意を呼びかけている。
和歌山市生活保健課によると、11日に市内の獣医師から「落ちていたウインナーソーセージを食べた犬が運ばれてきて死んだ」と連絡があった。残っていたソーセージを調べたところ、主に農薬に使われるメソミルが検出されたという(yahooニュース 産経新聞)
和歌山県で散歩中の犬が落ちていたソーセージを食べ死亡した事件で、ソーセージから毒物のメソミルが検出されたという話題
メソミルと言われるとなじみがないが、商品名ランネートと言えばよく知っている人もいるかもしれない
こちらによると毒物及び劇物取締法上の劇物、労働安全衛生法の第4毒物に指定されており、作用機構はコリンエステラーゼ阻害、経口投与した際の体重1kgあたりの致死量は、ラット17mg、マウス10mg、犬20mg、鳩10mgという
犬が仮に5キロとしても0.1gで致死量となかなかの危険物質である
農薬ランネートはメソミル含有量45%なので0.2gの混入でも致死量付近になってしまう
かつてはこの薬で害獣やカラスなどを毒殺する行為が普通に行われていた時期もあったようで、青い毒餌といえばこの農薬を混ぜたものであった
噂では農協で「カラス退治したいからランネートおくれ」という言葉が普通に交わされたこともあったらしい
現在ではこのような無作為に毒餌をまく行為は禁止されているし、毒劇物の分類になる農薬は購入の際に販売店にて身分証の提示などが必要になったため鳥獣害対策として利用している人はほとんどいないと思われる
一方で最近では野良猫などの被害の対策として一部のネット上でエチレングリコール混入餌とともにランネート混入餌を使用するという人達も存在するようである
ランネートの場合はかなりの即効性なので敷地内に仕掛けた毒餌を食べると庭から出る前に死亡するほどだという
また、エチレングリコール(EG)は不凍液に利用されるアルコールだが、これを一定量摂取すると猫などは急性腎不全となり死亡してしまうらしい
EGによる事件は今年の9月に北海道で話題となったばかりだ
猫殺しの疑いで39歳男性会社員を書類送検 餌に有害物質 札幌(産経新聞)
ただしこれは本人出頭による書類送検なので、この後起訴されるかどうかはわからない
これまで極端な虐待などの例以外では毒餌での野良猫駆除名目の行為に有罪が出た事例はない
農業分野の話題で毒による害獣対策といえば硝酸塩があるだろう
これは硝酸塩を一定量摂取すると亜硝酸イオンがヘモグロビンの2価鉄を3価に酸化し、酸素運搬機能がないメトヘモグロビンを生成しメトヘモグロビン血症(ブルー・ベビー症候群)を起こすというものである
そしてこれにより致死となるのは胃の中に長時間食物を保持する反芻動物に特有の現象ということで、静岡県でシカ対策として研究されたこともある
静岡県農林技術研、硝酸塩入り餌でシカ駆除 農作物被害防ぐ(日経新聞)
自然界に普通に存在する硝酸塩を利用し、日本に存在する野生動物としてはほぼシカ限定で作用すること、銃や罠にある欠点(誰にでも扱えない、市街地に近い土地で使えない、錯誤捕獲)がない方法として研究がすすめられた経緯があるが、主に残酷だという反対の声が多くその後の研究は進んではいないようである
ただ現状で農作物へのシカ被害対策としては有効な手段が少ない事と、窒息という表現だがこの場合のような血中酸素濃度の低下ではまず知覚の前に意識不明になるはずであるという指摘もあり、もう一度見直されるべきで方法ではないかという意見もあるようだ
余談となるが今回話題になったランネートだが、ここ最近店頭から消えていたので製造中止になったのかな?と思っていた方もいるようだが、実際は数年前に製造元のデュポン社の工場の火災事故で製造停止となり流通在庫のみで販売していたため品薄になっていたようだ
今年になってようやく環境基準などがクリアできたらしく現在では普通に入手できるとのことである