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「リンゴ黒星病」に農薬効かない耐性菌 県内でも確認

   

黒星病はリンゴの外観を著しく損ねる

県病害虫防除所(須坂市)は19日、リンゴに発生する病気「リンゴ黒星病」に使う農薬が効かない「薬剤耐性菌」が県内で初めて確認されたと発表した。青森県に次いで全国2例目。県は「耐性菌を放置すると農薬が効かない菌が広がり、産地に大きな影響を与える」として、生産者にリンゴ園で発生がないかを至急確認し、異常があれば農業改良普及センターに連絡するよう呼び掛けている。

黒星病はリンゴの葉や果実に黒いすすの様な症状が発生し、葉や果実の落下や果実の割れを引き起こす。感染が拡大すれば、収量の減少や品質の低下につながる。

今回確認されたのは松本地域のリンゴ園。県外から苗木を購入し、昨年の秋以降に定植したという。7日に農家から地元の農協を通じて連絡があり、県が8日に県外の専門機関に分析を依頼。症状が出た葉を調べたところ、通常、黒星病対策で使う農薬「DMI剤」が効かない菌だったことが分かった
(信濃毎日新聞)
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180620/KT180619BSI090012000.php


りんごの重要病害である黒星病に耐性のある菌が発生したという話題
すでに青森県でも発生が確認されており、長野県で確認されたのが国内2例目ということになる

今回耐性菌が発生したDMI剤というものはエルゴステロール合成阻害剤であるEBI剤(EBI:Ergosterol Biosynthesis Inhibitor剤)の一種であり国内で農薬用に使われるEBI剤の多くはDMI剤である

作用機構はステロール系の脱メチル化を阻害するためDMI(DeMethylation Inhibitor)剤という名前が付けられている
この薬剤の特徴としては浸透移行性があり、黒星病の発病後でも治療効果があるということであった
そのためりんご栽培では基幹防除薬として広く利用されてきた

長く使われた農薬はどのような薬剤であれ耐性を持つ可能性はあるが、治療効果があるため病斑を確認してからの防除(=菌が大量に増えてからの防除)で使われたと言うことも耐性獲得に至った原因の一つだろう

今後は長野、青森のみならず国内の主要産地はEBI剤の依存度を減らした防除体系を検討する必要がある

具体的にはEBI系統のインダー、アンビル、オンリーワン、アスパイヤ、スコアMZなどを防除歴から外しベフラン、フルーツセイバー、ジマンダイセンなどを組み合わせていく必要がある

系統の異なる薬剤ならば問題なく対象できるとしても、多くは治療効果の少ない、降雨前防除の保護殺菌剤がメインであるため、指導機関などがそのあたりの取り扱いの違いを徹底しておかなければ来期の国内リンゴ生産現場は危機的な物となるだろう

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