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従来の遺伝子組み換え作物とは違う? 新技術を用いた遺伝子"編集"作物が登場。アメリカ農務省は規制しない方針

      2016/04/27

pharmcorn-304x203遺伝子組み換え作物(GMO)は今、遺伝子編集という新しい技術のおかげで、変わろうとしている。

その最新の例は、CRISPR(クリスパー)を利用して遺伝子を編集した白いボタンマシュルームだ。‘編集’とはこの場合、生物のDNAのパーツを切って並べ替えることだ。

合衆国農務省によると、そのマシュルームは別の有害かもしれないバクテリアのDNAを使っているGMO植物のような危険性がないと思われるので、規制の対象としない。

ペンシルヴェニア州立大学の植物病理学者Yinong Yang博士は、マシュルームのDNAを変えて、酸素に触れても褐変しないようにした。そのコード中の二つの文字を入れ替えただけで、キノコは褐変しにくくなった。(techcrunch)

http://jp.techcrunch.com/2016/04/16/20160415crispr-creates-a-way-out-of-regulation-for-gmo-food/


 

ほかの生物などに由来する遺伝子を組み込んだ従来からの遺伝子組み換え作物はアメリカでは農務省の認可が必要となるが、今回のような自身の遺伝子を改変して生み出された遺伝子編集作物は規制の対象外という判断となっているという話題

業界の専門家の友人に聞いたところこのCRISPR-Cas9システムは発表以降速攻でノーベル賞を取るだろうといわれている遺伝子操作技術であり、遺伝子の狙ったところだけ置換させたりもできるとのこと

今回の遺伝子編集マッシュルームなどは自身の持っている遺伝子を発現させたり抑えたりするだけでその特性を発揮しているので従来の品種改良で用いられる交雑や変異誘発因子を利用したランダムスクリーニングと同じ範囲に線引きされるというのは科学的には妥当な判断なのかもしれない

日本では遺伝子組み換えという単語だけで拒否反応を示すことも多いが、例えば害虫抵抗作物を栽培する園地では過剰な農薬の散布を控えることができ結果的に環境負荷が下げられているという解釈もあるしカビ毒などの危険物質を含む量が減る可能性、またアレルゲンフリーだったり栄養状態に問題がある地域に欠乏ビタミンが補えるような作物(ゴールデンライス)が開発されたりと海外ではGMO作物の世界も日々進歩している

安全性の保証や表示の義務などのクリアするべき問題はあるが、日本の農業者がGMO作物についての科学的な考えを放棄してしまっていては世界と戦う上で取り残されていくことなるだろう

 - サイエンス