もう待てん、田に水を 農家200人自ら補修
2016/05/05
阿蘇市北部の小里地区などの農家約200人が30日、熊本地震で損壊した水田の用水路の復旧作業に当たった。一帯で田植え前の水張りができない中、自らの手で損壊部分を補修した。
作業をしたのは、1992年に完工した阿蘇谷圃場[ほじょう]整備事業13工区(192ヘクタール)の受益農家ら。例年なら5月1日に北外輪山麓にある約10カ所の水源から水を引き、田に張っている。田植えの時期が迫る中、行政による復旧工事を待てないことから、まとまって補修することにした
農家らは地元の土地改良区から提供された資材を使って作業。損壊した部分をモルタルで固めたり、隙間ができたU字溝の継ぎ目に樹脂を埋めたりした。
作業の中心を担った大倉富広さん(56)は「農地には段差も生じ、うまく通水できるか分からない。でも何もしないと前に進まない。早く田植えをしたい」と気持ちを振り絞っていた。(くまにち.com)
http://kumanichi.com/news/local/main/20160501012.xhtml
熊本大地震の被害を受けた用水路の復旧工事を農家が行ったという話題
この記事を話題に挙げたのは、この記事を見た一部の方々のコメントに「そんなことを農家がやるのは当然」とか「行政に頼るな」といった残念な意見が見うけられたからである
この作業に参加した農業者たちのためにもぜひこの問題がなぜ起こっているかを知ってほしいと思う
農地、特に水田などの用水路はその地区の土地改良区という都道府県の認可を受けた組織が管轄しており農家の個人の所有物ではない
用水・排水路などは非常に広範囲で多数の農地が影響を受ける重要な設備なので公共物扱いとして修理などの時もこの組織や行政主体で行われるのが常であり、農家が勝手に手を出してはいけない設備なのである
逆に勝手な修理を認めてしまうと仮にずさんな修理で用水路に欠陥が生じてしまえばその先の水路を利用する農家が水を利用できなくなるし、自分の園地に都合のいいように水路を改修されてしまう事態も起こりうる
そしてこのような工事は様々な手続きを踏むため時間がかかるのが常であるが、この大震災で関係機関もマヒしているだろうし、通常工事にあたる土木事業者もおそらくもっと重大なインフラの復旧作業に手を取られてこの工事まで手がまわらないのが現状であろう
本来なら工事の順番がが来るまで待つしかない状況だが「土地改良区から資材の提供を受けて~」と記事本文に書いてあるため非常時ということで農業者が応急処置を行うことで話はついたのであろう
ただ思った以上に破損した水路の修理などは難しく、専門家でも完璧に補修するのは至難の業である
特に今回は震災による被害なので目に見えない部分でも破損が進んでいる可能性はある
今回の農業者たちの気持ちが無駄にならないよう無事に応急修理が上手くいき、秋に稲穂の稔ることを願うばかりである