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改革遅れれば「第二全農」設立も 規制改革会議が提言(追記あり)

      2016/11/19

JA改革への提言がまとまった

規制改革会議のJA改革への提言とは(画像はNHK)

 農業改革の議論を進めてきた政府の規制改革推進会議(議長=大田弘子・政策研究大学院大教授)の農業ワーキング・グループは11日、全国農業協同組合連合会(全農)に1年以内の大幅な組織改革などを求める提言をまとめた。農家の所得向上を全農が阻んでいるとの問題意識が背景にあるが、急進的な内容に農協側は反発している。

購買事業は、全農が手数料を上乗せした価格で資材を生産者に販売しており、全農にとっての稼ぎ頭。提言では、全農が生産者ではなくメーカー側に立って手数料収入の拡大を目指している、と指摘。購買組織を1年以内に縮小し、資材の売買から手を引くよう求めた。

代わりに販売事業の強化を提言。生産者から委託された分を販売する現在の方式を1年以内に見直し、全農自らが販売に必要な分を買い取るよう求めた。全農がより真剣に販売に取り組むよう促す。

提言に強制力はなく、最終的な判断は全農に委ねられている。提言が受け入れられるかどうかは見通せない
改革が進まなければ、国が「第二全農」など新組織を立ち上げることにも提言は言及した(朝日新聞デジタル yahooニュース)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161112-00000002-asahi-pol


 

規制改革推進会議の農業分野の提言で、全農に対して大幅な改革を求める提言がまとめられたという話題
まだあまり大きなニュースにはなっていないが仮にこの提言が実現されることになれば農業の現場は相当に混乱することは間違いない

記事中に要点がまとめられているが

・資材の購買部門を1年以内に縮小
・出資する資材メーカーなどは、戦略に見合う効果がなければ売却
・農産物の販売体制を強化。委託方式から買い取り方式へ1年以内に転換
・主要輸出国への販売体制を1年以内に整備
・会長選出は選挙で行う
・改革の進捗が見られない場合、国は生産者のためとなる「第二全農」など新組織を立ち上げる
・金融事業を営む地域農協を3年後を目処に半減
・生産者への農協利用の強制を徹底して取り締まり

などかなり厳しい内容となっている
詳しい内容はJAcomが詳しいので関係者は一読しておくとよいだろう
2016.11.11 全農 1年以内に全量買取販売へ転換を-規制改革推進会議が意見

現実に農業の現場にいる者の感想としては規制改革会議のメンバーに農業や農協に関する知識のある人間はいないのだろうか?というのが率直な感想である
もしくは小口農家を切り捨て、全農の金融部門を民間開放させたいという意思があるならばこれを隠さずはっきりと言うべきだろう
自主運営の共同組合組織にすべての農政の責任がを押し付ける最近の動きには問題があると言わざるを得ない

トピ主は仮にも大規模農家であり販売も自主流通で資材も肥料、農薬業者から直接買い入れているし、補助金が絡む作物でもないために農機具なども自社購入である
そのためため農協や全農とのやり取りはほとんどないのだが、そうすることのできない(そこまでしようと思っていないという人も含む)農業者はこれからどこで資材を買えばいいのだろうか?
政府統計からみると農業者の多くは売上500万円以下の零細農家であり、その多くは高齢者である
このような人たちにとっては資材購入から販売、さらに生活インフラも支える地域農協は非常に大きな存在価値があるに違いない

また農産物の買い取り方式の販売などは現実的に言って無理がある
生産や品質が不安定で在庫も置けない農産物を買い取り販売する、しかも農協の公平性を徹底(=どんな生産者が持ち込んだ品質のものも買い取り拒否できないし、特定の品だけ有利販売することもできない)するということは買い取り価格を大幅に低く設定することでしか実現できないだろう

これでは農家としては高値の時だけ自主流通で販売し、安値の時や販売在庫があるときだけ農協に持ち込むという構図になるし、大規模で品質の良い作物を生産する農家から真っ先に脱農協になることが推測される
これまでのように農協が計画的な出荷とロットで市場で有利な立場で販売するということすらできなくなり、更なる買い取り価格の低下という悪循環に陥ることが想像されるだろう

また、主要輸出国への強化という面では農産物輸出1兆円という題目の実情が、生鮮農産物の輸出はわずか数百億円であり品目もりんごなどに限られていることから考えると、全農すべてにこれを強制するのは問題があるのではないか
野菜や日持ちしにくい果樹、酪農などが中心の地域では輸出すること自体まれであろう
また、金融を扱う地域農協を半減させるということは多くの退職者を出すことになるがその受け皿はどうするのかなどの疑問も残る

そして何よりこれらの改革を1年以内に実行せよとは、改革自体も実現させるつもりがないのかとすら感じられる
現在の事業を縮小し、余った人材で新たな販売や輸出を担当する人材を作れというが、規制改革会議のメンバーは1年で配置転換して新しい部署が担当できるほどのスーパーマン揃いなのだろうか
市場関係者内では農産物の目利きは10年たってやっと一人前といわれるほどである
たとえベテランでも今年のような異常気象を受けての野菜高騰を予想できた者はいないだろう

改革が実現されなければ国が「第二全農」を立ち上げるべきという恫喝ともとれる提言だが、ニュースを受けたコメントでは、そこまで言うならすぐに規制改革会議のイメージ通りの「第二全農」を立ち上げて現行の農協販売と競争させればいいじゃないか、という意見や、一票の格差や議員定数削減、公務員制度改革、年金改革などは何十年経っても解決していないではないかという批判の声もある

この記事には記載されていないが、今回の提言には
「全農をはじめとする農協系統組織は、組合員である農業者の所得向上を図ることがその使命であることに鑑み、その役職員の報酬・給与の水準については組合員にわかりやすく公表するとともに、農業所得の動向に連動させるべきである」という一文も含まれている
政府機関でもない独立した協同組合組織にそれだけの改革を強いるのである
改革の本気を示すためにも「国益のために働くことがその使命であることに鑑み、国会議員についてはその報酬や給与の水準について国の借金の額に応じて変動させるべきである」と提言してみてほしいものである

(追記)
この提言を受け首相は24日にも開かれる規制改革推進会議までに党内の意見取りまとめを指示、17日に同党の全国会議員を対象にした農林関係会議を開き、党内の意見集約を急ぐ方針だ
また山本農水大臣が「全農も農協もそれぞれ自己努力をしている。今後そうした点を踏まえながら、与党の意見をいただき改革を進めたい」と述べたようだ
JAや与党の声を踏まえた決着を目指す考えを示しているとのこと

JAや与党と協議 規制改革提言で農相 参院TPP特委(日本農業新聞)

(追記)
リンクを張るのも大変なほど多方から反対意見が出ているようだ
興味のある方はまずは当事者でもある日本農業協同組合新聞のページを参照するとよいだろう
JAcom-農政


 

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