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2020年東京五輪、日本の食材を提供できないワケ

   

GLOBAL G.A.P認証を受けた食材が揃うとは考えにくいが…

GLOBAL G.A.P認証を受けた食材が揃うとは考えにくいが…

自民党農林部会長で農協改革の旗振り役の小泉進次郎氏が都内で講演し、「安全にかかわる農産物の国際認証(グローバルGAP)を取得することが日本の農産物のブランド化につながり、農産物の輸出拡大にもなる。今年から国際認証の取得に向けて取り組まないと、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックの開催時に提供する食材に間に合わない」と強調、国際認証の獲得に向けて全力で後押しする考えを明らかにした。20日に開会する通常国会では「8本の農業改革関連法案を提出するが、自民党がまとめた『農業競争力強化プログラム』に盛り込まれた内容を実行、フォローアップしていく。今年の1年は農政新時代の礎を作る年だ」と述べた。(yahooニュース wedge)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170117-00010003-wedge-soci


 

2020年東京オリンピックの食材に関する話題
2012年のロンドン五輪以降、大会中に使用される食材の選定基準として何らかの認証を得たものが利用される流れになっている
ここでGAPという言葉が出てくるが、これはGood Agricultural Practiceの頭文字をとったもので、適正農業規範もしくは農業生産工程管理と訳される
平たく言えば「適切な農場管理とその実践」である

ロンドン五輪では国内産の農産物は英国独自のGAP認証であるレッドトラクター認証を受けた食材が基本レベルとなり、さらに意欲的に有機栽培されたものや持続可能な農業を達成している食材が優先的に利用されたということである
輸入品ではフェアトレードでグローバルGAP認定を受けたものが利用されている

また、前回のリオ五輪では
・ブラジルの法令を遵守した業者からの調達
・少年労働の排除など労働実務に合致する業者からの調達
・トレーサビリティシステムを備えること
・持続可能な生産工程管理を行う生産者からの調達
を最低基準とした食品の利用基準となっていたようだ

一方日本ではこの3月に東京オリンピック開催時に提供される食の調達基準が決まることになっており
・オーガニック(有機)食材
・農業と福祉が連携し、障害者を雇用して生産している食材
・国際認証を得ている食材
が優先的に使われることになる見通しとなっている

しかし日本の中でこれらを満たす農産物はまだごくわずかである
このことを心配して東京開催が決定したころから警鐘を鳴らしていた有識者もいたようだが、結局ギリギリにならないと決まらないのはある意味日本らしいといえる
ロンドンの場合は開催の7年前からすでに方針が決定されそれに向けて徐々に準備が進められていたが、2020年の東京開催まで残された時間は少ない

これまでヨーロッパでGAPなどの認証が浸透したのには、アフリカなどから農産物が多く輸入されていることやEU圏内で貿易が自由化されたこともあり、消費者からすれば生産者が不明瞭な場合が多くなったことが背景としてあるだろう
第三者が指標に基づいて農産物を認証するというGAPのような仕組みが必要とされたため発展してきたのである

逆に日本ではこれまで国産の農産物を選んでおけばGAPなどで認証されてなくても安全で安心な農産物を入手することができた
そのためGAP認証は輸出を考えるような作物以外ではあまり国内での優位性がなかったため、このような仕組みは発展してこなかったのだろう

有機栽培や農福連携の食材は提供できる品目や量に限りがあるため大会では認証を受けた食材が大部分を担うことになるはずだ
それに向けて本年以降これらの推進が強力に推し進められるであろうが、農産物という性質から今年中に認証を済ませ、来年にも作付けが行われないと間に合わない農産物も多い
これは東京や競技開催地だけではなく日本全国の産地で取り組まなければ解決できない問題であるだろう

(追記)
この記事を下書きした直後により内容の詳しい記事が日本農業新聞に掲載されたのでこちらも参考にしていただきたい
東京五輪 選手への提供食材 国産大幅不足の恐れ(日本農業新聞 yahooニュース)


amazonでGAP検索してもこの本の他数冊しか出てこない
しかもこの本も2010年刊行と内容が古いのが気になるところ

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