小型箱わなの対象拡大 環境省、鳥獣管理指針見直しへ
環境省は30日、今秋に見直す鳥獣保護管理法の基本指針で、狩猟免許を持たない農林業者による小型の箱わな設置を許可する方針を決めた。猟銃での捕獲が困難なアライグマといった小型鳥獣への対応として、田畑などへの箱わな設置を進め、年々増える農作物被害を抑える。基本指針に沿って都道府県が作成する鳥獣保護管理事業計画に盛り込み、2017年4月に運用が可能となる見通しだ(yahooニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160831-00010002-agrinews-pol
環境省が鳥獣保護管理法の指針を見直す方針という話題
5年ごとの見直しの予定で、今年がその見直しの年ということらしい
捕獲強化を打ち出す方針で、基本的な考え方に「鳥獣の(個体数)管理を強化する」と明記することとなったようだ
詳細は環境省の鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針に関する中央環境審議会答申について
およびこのページ内の鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針の 論点ごとの主な変更点(pdf)
を参照していただきたい
さて、農業ニュースサイトとして重要なのは「農林業者自らが行う捕獲に関する規制のあり方」についてである
そこには
小型の箱わな等により、アライグマ・ハクビシン・ヌートリア等の鳥獣を捕獲する際、農林業被害の防止の目的で農林業者が自らの事
業地内(使用するわなで捕獲される可能性がある希少鳥獣が生息する地域を除く。)において捕獲する場合であって、1日1回以上の見回りを実施するなど錯誤捕獲等により鳥獣の保護に重大な支障を生じないと認められる場合、狩猟免許を受けていない者に対して許可できる。
と記述されている
これをもとに農業新聞などの記事で今後は農業者は免許不要で箱罠設置可能になどど書いているようだがこれには少し注意が必要である
注意点は主に以下の2点
・小型の箱わなを設置するのに狩猟免許は必要なくなる予定だが、以前と同様に都道府県知事の許可は必要なこと(市町村に移譲されている県もあるようです)
・対象動物が「アライグマ・ハクビシン・ヌートリア等の鳥獣」と記述されているため曖昧であるということ
そもそも環境省の管轄である鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(wikipedia)では鳥獣の保護という観点が根底にあるため、農地を荒らす動物などもむやみに駆除してはいけないことになっている
現行の内容では大型、小型のわなにかかわらず自宅範囲内以外でのわなの設置は①狩猟免許保持者が②都道府県知事の許可を得て初めて設置できる
畑を荒らす小動物などがいても一般農家はわなで捕獲するのは許されないのである
これが今回の見直しで緩和されるのは農業者にとっては歓迎するところなのだが、先ほどの注意点を考えると記事のタイトルにあるような簡単な話ではないということがわかるだろう
小型害獣も近年被害が拡大しつつあるが、体が小さいため電気柵や銃などでの対策は難しい
ヌートリア出没、農作物被害深刻 浜名湖周辺で22匹捕獲
(いずれもyahooニュース)
箱わななどの捕獲では地域の個体数に大きな影響を及ぼすことはできないので根本的な解決にならないという専門家の声は正しいのだが、収穫直前~収穫中になって作物を荒らされることが多いので、各農家が自園地で簡易に捕獲できるようになれば(その個人単位での)農業被害を防ぐ意味では効果があるのではないだろうか
また錯誤捕獲に関しても柔軟な取り扱いを認めるべきという声もある
錯誤捕獲の熊 県内で対処に苦慮(信毎web)
県内でイノシシや鹿を捕らえるために人里近くに仕掛けたくくりわなやおりに誤って熊がかかる「錯誤捕獲」が4~7月に157件に上り、昨年同期の133件を上回ったことが30日、県のまとめで分かった。今年は熊の目撃情報も多く、人里近くへの熊の出没が増えている影響とみられる。ただ、鳥獣保護管理法により、錯誤捕獲した場合は原則、放獣しなければならない。捕獲歴を記したタグを耳に付けて放した熊が畑を荒らしたり、繰り返し捕まったりする例も出ており、農作物被害に遭っている農家や猟友会には悩ましい状況だ
この例でのようにイノシシ用で設置している罠にかかったクマは錯誤捕獲なので開放する必要があるが、クマに農業被害を受けているものからすれば園地や人家に近い場所で罠にかかった狩猟動物を開放するのは複雑な気持ちであるだろう
ましてやタグをつけて開放したクマが再びクマ用の罠にかかって射殺されたとあればそれまでに防げた被害があったのではないかという意見が出るのも仕方ない
今回簡易に小型箱わながかけられるようになるとすればこのような錯誤捕獲が起きる状況も格段に多くなるのは間違いない
その際にどのような判断をするかの指針を環境省は具体例で示す必要もあるだろう
野生生物の保護ももちろん大事なことではあるが、そこに住む農業者が害獣の被害により農業をやめてしまうようなことがあれば農村環境の維持を考えると更なる痛手となるのでは無いだろうか
環境保護に熱心な都会の住人だけで地域環境が守れる訳ではない
環境省も農林水産省とよく連携して指針の見直しを行っていくべきであろう
(追記)
鳥獣害対策 省庁横断で連絡会議 ジビエ振興人材育成 改正特措法に明記 与党方針(日本農業新聞)
改正特措法での目玉がジビエ振興人材育成とは現場の声とは少しズレているような…
担当者の悲鳴が聞こえてくるようである
立法する人間は思いつきで意見するのではなく現場担当者の声をしっかり吸い上げてほしいものである
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