(追記あり)JA庄内みどり、適用外農薬を誤発注 ナシ生産者が出荷自粛
2016/10/03
JA庄内みどり八幡支店(酒田市)の男性職員が今年3月、誤って適用外の梨の農薬を発注し、農家に納品していたことが15日、分かった。農薬取締法に抵触するため、散布した農家11戸は出荷を自粛し、育てた「幸水」や「豊水」など約80〜90トンが焼却処分された。同JAは損失補償金として、総額3000万円余りを支払うことで合意している(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160917/ddl/k06/020/099000c
2016年09月17日
JA職員が農薬の種類を間違えて発注し、それを利用した農家の生産した梨が農薬取締法に抵触するために廃棄処分になったという話題
こちらの山形新聞の記事のほうが少し詳しいが、モバイルの方は登録ページに飛ばされて読むことができないのでスマホの方はPC版の表示できるブラウザを使おう(chromeならメニュー → PC版サイトを見るをチェックする)
問題になったのは、先日偶然にもジェネリック農薬の話題で触れたペンコゼブである
当サイト記事:ジェネリック農薬の登録簡素化へ 17年度以降欧米と同様の簡素な手法を認める方針
梨では黒星病などの病気予防に5月ごろに使用されるようである
このペンコゼブには水和剤という粉状の薬剤と、フロアブルという液体の薬剤の2種類がある
水和剤とフロアブルは農薬の形状での分類としてはどちらも水和剤系であり、それぞれ特性は以下のとおりである
水和剤
水和性を有し、水に希釈、懸濁して液剤散布に用いる微粉状の製剤
農薬原体微粉砕し、補助剤および増量剤などと混合したもの
フロアブル
微粉化した農薬原体に分散剤や界面活性剤を加えて、水で懸濁させ液体状に製剤したもの
農薬を散布濃度まで希釈するときに、水和剤のように粉状だと均一に溶けにくかったり、風で粉が舞い上るなど(粉立ち)の欠点があるが、フロアブルはそれを補うために生まれた農薬の形態であるといえる
例えば1キロの水和剤を600Lタンクで均一になるまで調整するのは攪拌機でもなければなかなか苦労する仕事だが、フロアブルなら最初から水に混ざりやすい液体なので簡単に調整することができ、粉塵を吸い込む恐れもなく大変便利である
個人的にも新規農薬は水和剤ではなくフロアブルで提供してほしいと思うぐらい違いがある
さて、ペンコゼブ水和剤とペンコゼブフロアブルはどちらもマンゼブを成分とする農薬で本来は薬剤の形態が異なるだけのはずである
しかし製造元がフロアブルを農薬登録するときに水和剤よりも大幅に少ない作目でしか登録を取らなかったことが今回の原因の一つである
その数は水和剤で登録作物が28種類に対しフロアブルでは13種類の作物でしか使えない
理由としては農薬の試験と登録には非常に手間と資金がかかることから、利用量の多いと見込まれる作目でしか登録をとるための試験を行わなかったのであろう
今回はJA職員が誤発注し本来使用登録のない梨農家に「ペンコゼブ フロアブル」を配ってしまった上に、18軒中11軒もの農家がそれを疑わずに使用してしまったという過去に記憶のないような事件である
当然農薬取締法違反なので廃棄は仕方ないし、JA職員に知識がなかったのが一番の問題であるのは間違いないのであるが、11軒の農家がきちんと散布前にラベルを確認したり、そもそも例年使用している農薬と明らかに形状が異なっていることに疑問を持っていれば防げた事故なのではないだろうか?
約3000万円の損害をJAが補てんしたと書いてあるがきちんとラベルを読んだ残りの7件の農家やほかの組合員からは何か言いたいこともあるかもしれない
余談ではあるがこの記事をよんで、ほとんど水分の梨を90トンも焼却処分とはどうやったんだろう、とか
かんきつ類で収穫前90日以前でしか使用できない薬剤なのに生で皮ごと食べる可能性のあるきゅうりやトマトは収穫前日まで使用できるなんてどういうことだろうか、など色々と考えさせられる話題である
また、肝心のJA庄内みどりのホームページには全くこのことに対する情報は出ていないことは残念である
5月中に事件が発生して内部では対応していたとあるが、新聞報道などで知られる前にホームページなどできちんと報知することが、結果的に信頼の回復につながるはずである
(10/3追記)
先日急にストロビードライフロアブル(粉剤タイプ)を買うことになり、近くのJAに問い合わせると「500ml入り4本しかありませんよ~」との返事が
いや、それストロビーフロアブル(液体)だし!
かんきつの登録無いし!
その後もこれ以外は注文しないと無いですと一点張り
どうも話がかみ合わないので店頭に行ってみると…普通にドライフロアブル(粉の方)置いてある…
JAは事件の情報共有とかしないのかな?と思った一幕でした
庄内で有名なのは刈屋梨とのこと
今年は大量に破棄されて品薄かも