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冷凍牛乳 今秋にも全国販売 低温殺菌 風味良く タカハシ乳業

   

冷凍牛乳の販売とはどのような背景があるのだろうか?

冷凍牛乳の販売とはどのような背景があるのだろうか?

 

牛乳や乳製品を製造・販売する前橋市のタカハシ乳業が、全国的に珍しい冷凍牛乳の販売を今秋にも始める。市内の冷凍専門会社の協力を得て「低温殺菌牛乳」を急速冷凍する。会員制宅配を手掛ける会社を通じて全国に販売する計画だ。現在は賞味期限が製造日から6日間と短い。冷凍することで2カ月程度延ばすことができ、販売エリアの拡大が見込める。

冷凍牛乳は、農水省が昨夏、乳業メーカーと協力して冷凍技術の実証実験をしており、それに先駆けた動きとなる。同社は3年前から冷凍牛乳の販売に向けて準備を進めてきた(日本農業新聞)

https://www.agrinews.co.jp/p40657.html


 

以前から一部で話題になっていた冷凍牛乳がいよいよ販売開始される見込みになったという話題
牛乳の賞味期限は通常6日間であるが低温殺菌牛乳を急速冷凍することで賞味期限を2か月伸ばすことができるという

さて、牛乳では商品として流通させるためには殺菌処理が欠かせない
もし無殺菌であれば店頭に並べることもできないほど雑菌が繁殖しやすいものである

通常の牛乳の殺菌処理は130℃で2秒間などの超高温瞬間殺菌法 (UHT法)が主流である
これはコスト面や殺菌効果が極めて高いことなどが理由なのであるが、風味が失われるなどといった理由から65℃で30分間程度保持する低温長時間殺菌法(LTLT法、保持殺菌法とも呼ばれる)を用いた低温殺菌牛乳も存在する
ただし、低温殺菌牛乳とUHT殺菌牛乳の殺菌効率は1万倍の違いがあるといわれ、この結果よく見ると通常の牛乳は「賞味期限」、低温殺菌牛乳は「消費期限」となっているはずだ

また、ロングライフ牛乳(LL牛乳)というものもあるが、これは通常より高温(150℃程度)でUHT殺菌した牛乳を、無菌状態を維持できる設備を使ってアルミ箔を挟んだ特殊パックに詰めることで無菌状態のまま密閉したものである
以前の充填豆腐の記事と同じように無菌のまま密閉しているため常温で60日以上の長期保存が可能となっている
あちらとと違ってLL牛乳は1985年に法改正され常温販売が可能となっているようだ

今回、冷凍牛乳の開発と販売に乗り出したタカハシ乳業はこの低温殺菌牛乳に長年取り組んできたメーカーであり、低温殺菌の風味を生かしたまま長期保存を可能にする技術ということを売りにしている
ただし販売コストは1L換算で1000円、解凍に過熱するわけにはいかないので自然解凍で18時間かかるという問題もある
記事にはないが元々が低温殺菌牛乳なので解凍後は速やかに消費する必要があるだろうという点も気がかりである
これらの違いをしっかり周知しておかなければ通常の牛乳と同じように扱われ食中毒を引き起こす恐れもあるだろう

狙いはアジア向けの輸出商品ということだがまだ超えるべき課題は多そうな印象を受ける商品だ
農産物輸出を推進する農水省にとってはこれが輸出拡大の看板商品となっているのは少々気の毒な印象である


タカハシ乳業の乳製品セット
余談だがこの会社のホームページはある意味会社の歴史を感じさせるものとなっている

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