(記事内容訂正)愛媛県かんきつの台湾輸出額が1600万円→6万円に激減
2016/06/28
えひめ愛フード推進機構(会長・中村時広知事)は21日、愛媛県庁で総会を開き、残留農薬検査が強化された台湾への県産かんきつの2015年度輸出額が6万円にとどまったことが報告された。検査をクリアできない恐れが高いとして主力のハウスミカンの輸出を見合わせたため、14年度の1628万円から激減した。
機構は県産かんきつの輸出促進を事業の柱の一つにしており、台湾は全体の8~9割を占める主要な輸出先だった。事務局によると、輸出再開の見通しは立っていない。(愛媛新聞オンライン)
http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20160622/news20160622279.html
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愛媛県の台湾へのかんきつ輸出が15年度に突如激減したという話題
この記事だけでは輸出量が減少した理由がよくわからないのだが、これには近年台湾の農薬の審査基準が変わり、ネオニコチノイド系農薬の使用基準が厳しくなったからだそうである
これにより昨年までに審査基準で問題なかったえひめみかんが突然台湾へ輸出できなくなり、その結果翌年の輸出量がほぼゼロになってしまった経緯がある
特にジノテフラン(商品名:アルバリン、スタークル)の基準が「不検出」でないと許可されないためこれで引っかかる農産物が多いようだ
この薬剤は日本ではみかん以外でも小ネギや野菜類でも広く使われているので輸出への影響がとても大きい
また14年冬にはDMTP剤(メダチオン:商品名スプラサイド)が日本の基準値内に収まっているものの台湾の基準では問題になる量で検出され廃棄処分になった事例も大きく報道された
DMTP(メダチオン)は有機リン系殺虫剤として長年様々な作物で使われてきたが人体への毒性が指摘されることなどから様々な国で使用量が減少し、販売元のシンジェンタ社が権利を放棄、その後日本の全農がかんきつや茶の重要農薬だとし権利を買い取り国内で販売を続けている
ちなみに使用日数は温州みかん、茶で収穫14日前まで、かんきつ類で90日前までである(クミアイ化学工業のページ)
みかんとかんきつの違いはみかんは皮を食べないが、かんきつ類の中では皮を食用にする可能性があるということでこの違いとなっているようだ
ここで記事に戻るとハウスみかんの出荷をあきらめたという記述があるがハウスみかんは収穫前にアザミウマをはじめとした害虫の防除が必要で、これにジノテフランなどのネオニコチノイド系薬剤を含む農薬を使うことが多いので出荷を見送らざるを得なかったのだろう
輸出用の園地では新たな基準で栽培しているということで16年度の台湾への輸出量は大きく回復するに違いない
輸出を推し進める現政権だがこのような相手国との農薬の使用基準の違いにより輸出できない問題や、突然の基準値変更による出荷制限などのリスクがあるということを考慮してほしいものである
(追記)
この件で当時の記事とそれをみた人の反応を見ると「日本のみかんは外国の5倍の農薬使用量の危険品!」とか「外国では禁止薬物を使う日本農業」といった見出しで取り上げているアンチ農薬派のページが散見されるがそれにはあまり賛同できない
少なくとも日本国内の基準を守って使用されている農産物やその生産者を外国との基準の違いを引き合いにして批判するのは問題があるのではないかと思う
ただ農薬メーカーにはこのあたりの事情を説明する責任があるだろう
これらの薬剤の表示ラベルやホームページにて海外との使用基準が大きく違うため海外輸出用の園地では使用期限に注意、とか輸出用作物には使用しないなどの注意書きなどの対応をする必要があるのではないだろうか
また農薬を実際に使用する農業者も海外と日本でこのように農薬の使用基準が違う例があることを知っておく必要があるだろう
現在、農林水産省のページでイチゴと茶において作成された輸出相手国の残留農薬基準に対応した病害虫防除マニュアルや諸外国と日本での残留基準値の違いをまとめた書類が公開されているので興味のある方は一読をおすすめする
輸出相手国の残留農薬基準に対応した病害虫防除マニュアル
諸外国における残留農薬基準値に関する情報