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農家のナス出荷制限、農協に初の排除措置命令へ 公取委

   

高知県特産のナスについて公正取引委員会が排除勧告を出した内容とは

高知県特産のナスについて公正取引委員会が排除勧告を出した内容とは

 

ナスの特産地で知られる高知県の「土佐あき農業協同組合(JA土佐あき)」に対し、公正取引委員会は、独占禁止法違反(不公正な取引方法)で再発防止を求める排除措置命令を近く出す方針を固めた。ナスを同農協以外に出荷しないよう組合員の農家の取引を制限したと認定する見通しだ。市場への出荷ルートをめぐって農協に同命令が出るのは初めてとなる。(yahooニュース 朝日新聞デジタル)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170326-00000007-asahi-soci


 

ナスの出荷に関しての公正取引員会が排除命令を出すことになったという話題
これは全国のブランド農産物を抱える地域の農協にとって頭の痛い問題となりそうである
JA土佐あきのページはこちら

以前このサイトでも大分の小ネギに関して公正取引委員会が動いた話題を取り上げたが(当サイト記事:味一ねぎ」商標使わせず 公取委、県農協立ち入り)、市場への出荷ルートに関して排除命令が出るのは今回が初めてということであり、これまで問題が表面化していなかった地域でもこの事例を根拠として農協を通して販売はしないが、選果場などは利用して独自販売に踏み切るという農家も増えてくるだろう
ただし大分の事例は農協の持つブランド名の使用に関してなので今回の例とは内容が異なっていることは注意しておきたい

構図としては農協とは独立した、農家の自主組織である支部(生産部会)というものが存在しており、農協管内の複数の支部が農協ルートでの出荷に応じない農家を除名し、選別や箱詰めをする集出荷場を使わせなかったという内容である

農協としては「支部は農協から独立した組織。農家同士の規約に従ったもので、農協は関与していない」と反論していのだが実際は農協と支部は実質的に一体となって共同販売していると判断されたようだ

さて、この排除勧告に従うとすれば(農協組合員であれば)誰でも農産物を農協に持ち込み、選果場や箱詰め機械などを利用して製品となったものを持ち帰り独自に販売していいということになる

ということは農協側も販売手数料の見直しをおこない選果経費や資材費などそれぞれ独立して利用されても採算に乗るように各段階での経費の算出と利用料の再設定を行う必要が出てくるだろう

ただ農協側に立つと施設の利用は断れない上に、販売可能な量も不確定ということになれば今後このような状況が拡大すればこの先の販売戦略もかなり苦労することが予想される
多くの農家を集めることで大量のロットを集め計画的に出荷できることが農協の販売での最大のメリットであり、それにより一般の個人販売農家よりも優位販売がなされている
特に変動の大きい野菜類では相場の下がったときだけ農協に出荷されて、高値の時は好き勝手に業者に販売されるとなれば共同販売は成り立たない
その時は独自販売できない小さな農家から経営が苦しくなってくることは明らかであろう

農業の問題を生み出していると思われている農協だが、小さな農家の多い日本の農業にとっては選別や販売を一体となって行うことでコスト削減や価格交渉力をもたらしていることは間違いない


 

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