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ジャンボタニシ繁殖で水田被害 米の収穫量が去年より70%近く落ち込む見込みの農家も

   

ジャンボタニシ

ジャンボタニシ

水田で稲の苗を食べる外来種の巻き貝、いわゆるジャンボタニシが県南部の水田の
広い範囲で繁殖していることがわかり、ことしのコメの収穫量が去年より
70%近く落ち込む見込みの農家もあるなど被害が相次いでいます。

倉敷市福田町古新田の稲作農家、山田徳三郎さんのおよそ10ヘクタールの水田では
ことし6月中旬に田植えを行った後からジャンボタニシに苗が食べられる被害が相次ぎました。
中にはイネがほとんど残っていない水田もあり、ことしの収穫量は去年より
70%近く落ち込む見込みで、50年近くコメ作りを続けていて
過去最悪の被害になる見通しだということです。
山田さんは 「これだけの被害は経験したことがないことしは赤字を覚悟している」 と話していました。

県によりますとこれまでに岡山市や倉敷市などを中心に農家から被害の報告が相次いでいるということです。
ジャンボタニシは水の張った水田で繁殖しやすく県はことしは6月の降雨量が
比較的多かったことから水位の下がらなかった水田で広く繁殖したのではないかと見ています。

備前広域農業普及指導センターの小野和彦主幹は
「講習会などを通じて対策を呼びかけたい」と話しています(NHKオンライン)

注:元記事はすでに消えているようなので長めに引用しています


 

ジャンボタニシにより壊滅的な被害を受けている地域があるという話題
ニュースなどでよく耳にするジャンボタニシであるが過去に食用として台湾から長崎県と和歌山県に持ち込まれたのが始まりである
83年ごろには養殖場が35都道府県の500カ所にものぼったらしい
その後食用としての需要は上がらず養殖場は閉鎖されていったが、そこから野生化した個体が主に稲を食害する有害動物として広まっていった経緯がある

とりあえずの話題としてジャンボタニシはタニシではない
何を言ってるんだといわれそうだがタニシは稚貝を産んで増える種であり、特徴的なピンクの卵を産むジャンボタニシは正確にはタニシではなくスクミリンゴカイという種類である

ジャンボタニシの卵

気持悪いピンク色の卵

田植え直後の稲を食害することや、卵の見た目の不快さも相まって被害地域では非常に忌み嫌われている

主に九州地方で被害が多いのだが、その分対策も経験が積まれており現在では被害も減少傾向にある地域もあるようだ
対策をいくつか挙げると、

寒気に触れると越冬できないために冬場に数回耕起することで越冬する成貝を減らせる
卵を見つけ捕殺する(なぜか水中に落とすだけで卵は孵化できず死滅する)
用水路などに目の細かい網を設置し侵入を防ぐ
田植え直後(20日程度)は水位を低く保つことでジャンボタニシが移動できなくなり食害を減らせる
登録のある農薬を使用する
・ スクミノン   1~4kg/10a・収穫60日前まで・2回以内
・ ジャンボたにしくん  1~2kg/10a・収穫60日前まで・2回以内
・ キタジンP粒剤  3~5kg/10a・本田初期・2回以内
・ ルーバン粒剤  4kg/10a・収穫14日前まで・4回以内
・ スクミハンター 1~2kg/10a・収穫45日前まで・3回以内
・ スクミンベイト3 2~4kg/10a・発生時・-
※ただし、「スクミノン」と「ジャンボたにしくん」は併用しない

このほかにも天敵のスッポンなどを放って成果を上げている地域もあるらしいが、そうするとスッポンの密漁を狙う人間もいるらしく、そちらの対策にも追われることとなっているようだ

ここで最後の農薬に関してだが、一部地域でボルドー液やツバキ油粕をジャンボタニシ対策として使用する農家もいるようだがこれは大変問題がある
ボルドー液は農薬であるため当然登録のない使用法ということになり農薬取締法違反である
また園芸用肥料として売られている椿油かすはサポニンという成分が農薬としての効果を発揮するようだが、「資材の原材料に照らし使用量や濃度によっては農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがあるもの」として指定されており、ジャンボタニシの駆除目的で使用するとこれも農薬取締法違反となる

被害を受ける側からすれば藁をもつかみたいところで対策を講じている農家もいるだろうが、違法な農業を続ければ結局は農業者にとって不利益として戻ってくるのは間違いない
農薬は適正に使用することを遵守するべきであろう

今回のニュースの地域で被害が出たのは普段発生地域でない岡山県だったことと、本文中にもあるように6月の降雨が多く適切な水位の管理ができなかったことによるものが大きい
うまく発生初期の被害を抑えればその後は逆に雑草の除草に役立てることもできるという
対策の進んでいる地域と情報をしっかり共有して対策を講じていく必要があるだろう

 

 

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