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小学校侵入のクマ射殺→「可哀想」と苦情 地元関係者に反論を聞く

   

麻酔銃の使用は意外とハードルが高い

麻酔銃の使用は意外とハードルが高い

岐阜県高山市の小学校で、野生のツキノワグマが授業中の校庭に侵入し、地元の猟友会が警察の指示のもとクマを射殺する出来事があった。この騒動をめぐり、「クマがかわいそう」との問い合わせが市や学校などに寄せられている。

高山市立栃尾小学校の校庭にクマが侵入したのは、2017年9月6日正午前ごろのこと。侵入したのは体長約1メートルのオスのツキノワグマで、発見した教職員の通報で警察や地元の飛騨猟友会メンバーが校庭に駆け付けた。

こうした騒動がニュースで報じられると、学校や市には「クマがかわいそう」といった趣旨の問い合わせが寄せられることになった。
また、高山市農務課の担当者も取材に対し、「クマが可哀想だ」「子供の目の前で射殺していいのか」などの問い合わせが電話やメールで寄せられたと明かした。(yahooニュース J-CAST)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171013-00000011-jct-soci


岐阜県の小学校にクマが侵入し、地元猟友会が警察の依頼の元に射殺すると、それに対して非難の声が上がったという話題
クマがかわいそうという感想を抱くのは各人の自由であるが、わざわざ非難の電話やメールをするというのは現実を知らな過ぎる
事件関係者は気の毒である

環境省がクマによる人的被害の統計データを出しているが、昨年度の平成28年度では判明しているだけでも人的被害106人、死亡4名という
多くは山に立ち入った人間の被害だろうが想像より多い被害人数である
クマはおとなしく、めったに人を襲わないというのは間違いであることが分かるだろう

PDF:クマ類による人身被害について(環境省)

学校まで出没するようなクマでは何らかの方法で追い払いができたとしても再び人間の近くに現れる可能性は高い
近年は人間を恐れない新世代のクマが増加しているという記事もある
人を怖がらない「新世代」が増加 「人=食べ物」と学んで襲撃か?

では麻酔銃などで捕獲するというのはどうだろうか
こちらの産経の記事では 野生動物の生態に詳しい岩手大学の青井俊樹名誉教授が「一般的には麻酔で眠らせて山へ帰すのがベスト。だが、現場で麻酔銃がすぐに整うことはまれで、やむを得なかったのだろう」とコメントしている

「小学校庭で侵入グマ射殺」がなぜ非難される…児童の安全優先「やむを得ない判断」に“第3者”から反発の声

ただこれは現場に詳しい専門家のコメントとしてはもう少し言い方に注意してほしい部分もある
麻酔銃というものの利用は使用者が猟銃の所持の資格のほかに麻薬研究者免許が必要となる
これは麻酔銃に使われる薬の成分である塩酸ケタミンが麻薬成分として指定されているためである
またクマなどの体重の重い動物が対象の場合薬量も多くなり、接近すると危険も大きいことから使用されるのはライフル型の麻酔銃ということになり、通常の猟銃所持に準ずる資格基準を満たさなければならない

獣医かつ猟銃所持者でクマ用の薬量のダートを使用できる麻酔銃を所持している人間が常に出動できる体制で待機していることなど現実には考えられない
学校などの場所にクマが出現した時点でそのような人材を探している間に逃走するか被害が出てしまうのが当然だろう

また、大型動物では麻酔が効くまでに時間もかかるため発砲から着弾による興奮によってかえって被害が出る可能性もある
そのため環境省では住宅集合地域での麻酔銃の使用はクマ、イノシシ、シカなどの大型動物では原則許可していない

「麻酔銃がベストだが射殺もやむを得ない」という発言はそこだけ読んだ人間にとって誤解を招く表現であることに間違いはないだろう

ただし麻酔銃の使用自体は住宅集合地域での効率的な動物の捕獲の方法として近年改正され、主にニホンザルなどに対して有効利用されているようだ

住居集合地域等における麻酔銃の取扱いについて(環境省):pdfファイル


おまけ:ネットでは有名なこのクマ動画を見ると、たとえライフル銃を持っていてもクマと対峙したときは命の危険があると言うのがよくわかる

仮にこれが麻酔銃だとすれば当たっても効果を発揮する時間までに射手に被害があったであろう


この某探偵の麻酔銃ぐらい威力があれば…

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