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全既存薬が効かない「悪夢」のスーパー耐性菌、米国で初確認

   

coli全ての既存薬に耐性を持つスーパー耐性菌への感染が米国内で初めて確認されたと、米疾病対策センター(CDC)が26日、発表した。抗菌薬が効かない「ポスト抗生物質時代」の到来に警鐘を鳴らしている。

感染が確認されたのは、米ペンシルベニア州在住の女性。尿路感染症の検査で、感染症治療における最終選択薬とされている抗生物質「コリスチン」への耐性を持つ大腸菌株の陽性反応が出た。(AFP通信)

http://www.afpbb.com/articles/-/3088534


 

米国で強力な抗生物質に耐性を持つ大腸菌への感染が初めて確認されたという話題

今回のコリスチン耐性菌はMCR-1という遺伝子を保有しているのだが、これはすでに中国国内などでは昨年から確認されていた
今回海外渡航歴のない女性から発見されたということですでに米国内でもMCR-1遺伝子獲得菌が広がりつつあるということを示している

ただし今回も見出しだけを読むとすべての抗生物質が効かない最悪な耐性菌が出回っているかのような印象を受けかねないが、実際にはカルバペネム耐性菌(CRE)にも有効な薬剤のコリスチンに耐性を持つ耐性菌が見つかったというだけでカルバペネム耐性菌がMCR-1遺伝子を獲得してスーパー耐性菌が誕生したというわけではない
仮にCRE+MCR-1の性質を持つ大腸菌が発見されたとなればまさに悪夢の始まりとなるところであるが、この患者はおそらくカルバペネム系抗生物質で普通に治療されることになるだろう

今回の感染経路はおそらく中国の畜産でコリスチンが常用されている中で耐性菌が誕生し、米国へ輸出された食肉で感染が広がったと考えられる
畜産業界では病気抑制や成長促進のためとして抗生物質が投与されるたり、飼料中に添加されることが多いがそのことによるリスクに対する懸念が高まり、様々な規制や適正な利用方法が定められている
家畜に使用する抗菌性物質について

このような対策を取っている日本の畜産業界でも耐性菌の発生が増加しているという報告もある
しかし中国衛生局によると中国での人間での使用量は1人当たりで米国人の10倍、家畜への使用量はさらにその3倍である
近年はインドで抗生物質の乱用が広がり今では世界の三割以上を消費しているという話もある

米国でも今年12月より畜産での成長目的での抗生物質の使用が禁止されるようである(米、牛や鶏などへの抗生物質投与規制 薬剤耐性菌を抑制
これは年間200万人が薬剤耐性菌に感染し、2万人以上が死亡している状況を重く見たものであるようだが、新興国でもいずれこのようになる前に適正な抗生物質の使用を目指すべきであろう

 - サイエンス