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輸入ブドウ周年化へ 国産と競合の恐れ 中小スーパーのグループ

   

メキシコ産ぶどう

メキシコ産3色ぶどう

年間売上高4兆円を超す、中小食品スーパーが加盟する「CGCグループ」(CGC)は、種なしで皮ごと食べられる輸入ブドウの周年仕入れに乗り出した。7月のメキシコ産を皮切りに、国を替えながら、加盟社の棚づくりを支える

7月からはメキシコ産の種なし・皮ごとブドウを扱い始めた
価格は100グラム89円に設定。同時期に出回る国産「シャインマスカット」と比べ価格は10分の1以下だ。同店では週2回170パックを入荷し、次の入荷までには売り切れる。「お客の反応は上々。試食して籠に入れる客が目立つ」という(日本農業新聞)

https://www.agrinews.co.jp/p38135.html


 

スーパーグループが輸入ブドウの周年取り扱いを始めたという話題
以前のリンゴの記事では国産の端境期に輸入ものが店頭に並んだり、かんきつ類でも温州ミカン類似の品が外国から輸入され始めたりしているが、周年で国産と真っ向から競合する生食用の果実の取り扱いを始めるのは珍しい例ではないだろうか
しかもリンゴやみかんの場合は国産品とほぼ同等価格での販売だが今回は10分の1程度の価格での販売となっている

記事にも出てくるシャインマスカットは近年のブドウ農家に明るい話題をもたらしているヒット商品だが、その人気ゆえに一般消費者が店頭で購入するにはためらわれるほどの価格となっている
そこに同じように皮ごと、種無しで手軽に食べられる品種が圧倒的に低価格で、かつ一年中並ぶとなれば大きな脅威となるだろう

記事によると
>国内産地は「特性が共通するとはいえ、品質が違う。すぐに国産の需要を奪われるとは思わない」(日本園芸農協連)と受け止める。

とあるが、はたしてそう楽観できるのだろうか?
予想以上に一般消費者の購買力は下がっている
よほど味やその他の要因で差別化できない限りは大きくシェアを奪われる恐れがあると個人的には思う
また以前の中国でシャインマスカットが無許可栽培されているという話題も考慮すると今後品質でも同レベルのものが安価に流入してくる可能性もある
販促やパッケージ、安心安全など価格以外でも差別化を図っていくことが必要だろう

折しも石川県のルビーロマンが1房110万円で兵庫県のスーパーに落札されたという話題が全国ニュースで流れた
このスーパーは5月にもメロンを2玉300万円という価格で落札している

すしざんまいがマグロの初競りに超高額な値を付けるのはもはや恒例行事であるが、これは全国報道に乗せることを狙った完全な売名行為である
現にすしざんまいもかつて1億円を超える値段で初物のマグロを競り落としていたこともあるが、近年ではその広告としての投資は終わったとして1500万円程度まで落札価格を落としている

このような印象操作による小手先の売名ではなく、消費者の立場に立った国産ブドウの優位さをアピールするよう関係者には努力していただきたいと個人的には思う
またあまりに実態とかけ離れた高価格路線を追求しすぎると、国産ぶどうは贈答でもらうもの、普段一般人の私たちが食べるのは輸入物で十分、という風潮になる危険もあるのではないだろうか

(追記)
今回話題になったルビーロマンという品種について大分県内のぶどう農家に聞いたところ、大粒で赤い種類というのが特徴で、もともと大粒になる種類の藤稔という品種の種を400粒まき、その中からわずか4本生まれた赤い種類の中から選別したらしい
ただしもともと親となった藤稔という品種が現在のぶどう品種の中では糖度が上がりにくい種類のために出荷基準である糖度18度(通常流通しているピオーネや巨峰と同等)、粒径3センチ以上を満たすものは3割にも満たないとのこと
石川県の育種になるために県外では栽培することができず、その希少価値と石川県のブランド戦略から高級ぶどうとして取引されているようだ

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