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若者のリンゴ消費低迷/総務省家計調査

   

総務省の2016年の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりのリンゴ年間購入数量は、世帯主が「70歳以上」の世帯は20.8キロだったのに対し、「29歳以下」はその10分の1以下の1.9キロにとどまった。若い世代の消費低迷は需要の先細りにつながる可能性があり、青森県や関係団体は小学生を対象とした食育や学食での試食イベントなどに力を入れている。(yahooニュース web東奥)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170506-06113102-webtoo-l02


 

リンゴの消費に関してのニュース
総務省の調査によると世帯主が70歳以上の世帯に比べて10分の1以下の購入量とのことである
ではその他の果物ではどのようになっているのだろうかということで総務省の統計をグラフにまとめてみた
出典(「家計調査結果」(総務省統計局))2016年次

総務省統計まとめ(単位は金額)

総務省統計まとめ(単位は金額)

 

これを見るとどの果物も同じような傾向だが、特にリンゴ、梨、柿などで同じように高齢世帯で極端に消費が大きくなる傾向がみられることがわかり、逆にバナナ、イチゴ、ぶどう、キウイなどは比較的どの層でも均等に消費されていることが分かるだろう
記事へのコメントなどを見るとこれはやはり皮を剥いて切り分けないと食べられない種類の果物というところが若者離れの進んだ原因の一つと考えられるだろう

ここで一つ注意していないといけないことは、この統計での数字は、世帯主の年齢別に分類された二人以上の1世帯単位の購入量ということである
29歳以下が世帯主の2人以上の世帯ということは夫婦2人のみ、または乳幼児1人を含む世帯ということになる場合が多い
これに引き換え50代や60代が世帯主で2人以上の世帯ということは子や孫も含めて家計を消費する複数の人数がいる可能性が高い点には留意しておく必要があるだろう
引用記事に恣意的に若者世代との格差を大きく見せようとした意図があったとは思えないが、たとえばみかんの消費量などでの世帯別分布の分類では39歳以下はすべてひとまとめに分類されている場合が多い
統計はそのままでは単なるデータの蓄積であるが、それをどのように分類し、有意な情報として取り出すかが肝要なことなのである

もう一つこの記事へのコメントを読んでいると感じることは、国産果物の高級路線が果たして正しかったのかということである
果樹農業の現場ではとにかく高糖度、高付加価値、高品質化といったキーワードだけが語られることが多い
確かに農家収入を増やすためには高単価で売れる農産物を作るのが一番であるが、結果的に普及価格帯の農産物が足りなくなってきている現状がある
店頭でリンゴが1個200円、ブドウが1房1000円、イチゴが1パック700円もすれば、20代が自分たちで食べるために購入することはまれであろう
こうした隙間にバナナをはじめとした輸入農産物が入り込んでいる現状がある
当サイトでも話題に扱ったが、輸入リンゴや輸入ぶどうも着実に販売スペースを拡大しつつある

国産輸出増の隙を突き・・・ スーパー席巻 本末転倒? NZリンゴ
輸入ブドウ周年化へ 国産と競合の恐れ 中小スーパーのグループ

こうした環境に慣れた若者世代が50代、60代となった時にどのような基準で農産物を選ぶかは分からないが、少なくとも今の中高年層ほど国産品を絶対の優位とすることはないだろう
記事では、青森県は若い世代のリンゴの消費を促すためには幼少期の食習慣が重要とみて、小学生などを対象とした食育活動を県内外で行っているとのことだが、その隔たりはひたすらに農産物の高付加価値化を目的としてきた農業政策が招いた弊害なのではないだろうか


 

 

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