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農業分野から見たEU離脱問題まとめ

   

英国EU離脱

英国EU離脱後のゆくえは?

欧州連合(EU)離脱の賛否を問う英国の国民投票は23日投開票され、離脱支持が過半数を上回り、勝利した。1993年の正式発足以来、EUから加盟国が離脱するのは初めて。世界経済混乱への不安が広がり、円相場は急騰、日経平均株価も大幅に下落した。混乱が長引けば、大胆な金融緩和で円安・株高を進めてきた安倍政権の経済政策「アベノミクス」にとって痛手となるのは避けられない。景気や暮らしへの影響を懸念する声が強まっている。日本の農業政策にも余波がありそうだ。(日本農業新聞)

英国 EU離脱決定 対日EPA影響必至 “攻め”の農業に逆風


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イギリスのEU離脱を問う国民投票が行われ、離脱派が過半数を超え勝利した
これによる様々な影響が起こっているが農業分野から見たこのEU離脱騒動はどのようなものなのだろうか

記事によるとこの結果により日本では急激な円高が進行、さらに株式も1200円以上下げるなど大混乱となっている
攻めの農政として輸出を推し進めていた自民党農政にとっては目標としていた1兆円達成が大幅に後退したのは痛手に違いない
さらに大幅な円高が長期に続くとなると今後TPPが発効されたときにこれまでの予測以上に国内農業が打撃を受ける恐れもある

日本とEUの経済連携協定(EPA)交渉への影響も大きいだろう
交渉に前向きであった英国がEUを離脱することで交渉が停滞するとの見方が強く、離脱後の英国との関税や貿易の取り決めをどうするかなどの交渉でそれどころではなくなる可能性もある

英国がEUを離脱する意思を示した経緯は多くのサイトで語られているが当の英国では農業はどうなるのだろうか?

イギリスの漁師は90%がEU離脱支持──農家は半々(Newsweek日本版)

これによると投票前の意見調査では漁業関係者は9割が離脱支持、農業者は意見は半々に分かれているといったところらしい
イギリス全体ではEUに対して否定的な意見は3割ほどだが漁業関係者の9割がEUに対して否定的な意見を持っているというのは興味深い
これはEU加盟国の共同農業政策(CAP)および共通漁業政策(CFU)が関係している

共通農業政策とは(農林水産省のページ)
実にEUの予算の4割を占めるというこのCAP政策は大きく価格政策(価格保証と直接支払)と農村振興政策によって構成されている
概要は省くがこれにより多額の補助金が農業者に投入されており、これによってEU各国の農業は維持されているともいえる

フランスなどがEUで農業国といわれているがこのCAPにより日本よりもずっと多額の補助金が投入されていることを忘れてはならない(拠出額も多いが)
英国などでは実に農業者の収益の半分以上がこの補助金によって賄われており、これがなければ経営を維持できない農業者が大量に出るといわれている
英国は大農業国ではなく拠出金190億ポンド、EUから割戻しで交付される額が90億ポンド、そのうち農業予算が30億ポンド程度とみられており、離脱派は必要なくなった拠出金から同額程度の補助金を出すので問題ないという主張を行っており、農業者はEU離脱支持が半々程度に収まった

しかし漁業側のCFUではこのような厚い補助金による損失の保障がなかったため漁業関係者は大きな不満を持っており大多数が離脱を支持したというわけだ
さらにEU離脱後でも魚介類はEU内とくにフランスとスペインで人気が高いため輸出量が減ることはないと漁業関係者は見ている

実際のところは離脱した英国からEUに輸出入するときの関税がどうなるかとか、自由な労働力の移動が不可能になることによる季節労働者の確保が問題になる可能性があるなど行き先は不透明である
さらに離脱派の主張もそのまま鵜呑みにはできないようで今後の混乱はしばらく続きそうだ

EU離脱、バラ色のはずが…旗振り役が「公約」を反故(yahooニュース)

今後段階的に離脱に向けての手続きの整備が進むとみられているがこの混乱が続く限りは世界経済並びに日本農業にとっても大きな火種が残ることになりそうである

 - 農政, 農業環境