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財政審 コメ転作支援の交付金制度見直しを

   

審議会の内容まとめ(日本農業新聞より)

審議会の内容まとめ(日本農業新聞より)

 

国の財政問題について話し合う財政制度等審議会は4日、農業予算を取り上げ、主食用のコメから家畜の餌用の米などへの転作を支援する「交付金制度」について、財政負担がかさむうえ、野菜など収益性の高い作物への転換を妨げているとして、農林水産省に見直しを求めていくことになりました

これについて財務省は、飼料用米や麦の販売収入は主食用のコメの10分の1以下にとどまり、転作したあとの収入のほとんどが交付金、すなわち財政負担で賄われているのが実態だと指摘しました。
このため財務省は、交付金制度を見直し、野菜など収益性の高い作物への転換が進むよう、予算を重点的に配分していくことが望ましいとしました(NHK)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161104/k10010756351000.html


 

財政制度等審議会により水田の飼料用作物への転作助成金を見直すべきだと指摘されたという話題

財務省の指摘では財務負担が増える上に他の作物への転換を阻害しているという言い分である
以前より麦や大豆などの場合作物自体の売価はわずかで、農家収入のほとんどはそれに付随する補助金であった
これまでこのシステムに関してはあまり議論されることがなかったが、近年飼料用作物(飼料稲、飼料米)に多くの補助金が出されるようになり、急速に耕作面積が増えていることが問題となっているのであろう
当サイト参考記事:「減反廃止」は実際には減反強化?

主食用米と同様な作業内容で作れる飼料米などでほぼ全額補助金により主食用米と同等レベルの収入が確保できるとあってはこちらを選択する農家が増えることは当然である
農水省としてはさらに現在の2.3倍の110万トンを目指しており、それが達成されれば現在600億円程度の飼料用米交付金が最大1600億円程度まで膨らむと考えられており、財務省としては見逃せない数字となっているようだ

減反廃止になった後に耕作地を減らさないための策であるが、飼料作物を主食用米に匹敵する額で買い上げるという財政負担と、食用米の生産を減らす実質的な減反政策ということで米価が上昇し一般消費者の負担が増えるという問題は以前より指摘されていた
それよりは主食用米を全力で生産させ、仮に米価が半額になったとすればその差額を助成金で負担させる方が経済的だという声もあるだろう

しかし減反の廃止という重大局面を受けて目玉として始まったこの政策により、多くの農家が(大規模農家ほど)飼料用作物の生産に舵を切ったところである
不安定な相場に左右されず、耕作面積である程度収入が計算できる作物として経営の中心に据えた事業体も多いと聞いている
シンプルに経済的な面から見れば問題点の多いこの政策かもしれないが、そう簡単に梯子が外されるようなことがあっては政府の描く農業の将来像が問い直されることとなるだろう

また審議会としては野菜などの収益性の高い作物への転換を阻害しているという見方をしているが、実際は減反廃止で飼料米転作助成金も減額となれば耕作放棄地が増えるだけだろう
転作助成金の額が高いということ以前に、機械の投資や園地の改造、新たな栽培知識の習得などの必要がない飼料稲や飼料米だからこそ急速に利用が広がったこの政策である
平均77歳ともいわれる稲作農家が、仮に水田が赤字になるとしたら収益のために野菜に転作するという意欲があるだろうか?
機械化の進む稲作だからこそ高齢でもある程度の規模の農地が管理できるのであるということを審議会は見逃している
このニュースを受けたコメントで、仮に今回の提言を受けこの政策を見直すとなれば地方の維持や国土の保全という観点からみると農水予算で補うところの他に、他の省庁の財源から補う政策などが検討されるべきではないかという声も上がっているようだ

審議会のメンバーを見ると財界の有力者や学者はそろっているが農業を専門とする委員はいないように見受けられる
今回の審議会の提言を受け、政府や農水省がどのような対応をするかが注目される

財政制度審議会委員名簿

なお今回の審議会の提言では小中学校の教員を10年後に5万人削減する案が提案されており、そちらは大きな反響を巻き起こしているようである


 

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