みかん生産量が過去20年間で最も不作となった理由とは
ミカン21年ぶり高値 絶対量足りずキロ338円 12月中旬京浜市場
樹勢低下による着果不良に、秋の天候不順が重なり、早生以降の出荷が少なく絶対量が足りていない。専門家は「異例の高値だ。気象の影響に加え、高齢化や、園地の老木化といった生産基盤の弱体化が背景にある」と指摘。労働負担の軽減など安定生産を後押しする対策が急務と訴える。(日本農業新聞)
平成29年度産のミカン生産量はかなり少なく、需要が逼迫し20年ぶりの高値となった
この原因は天候不順と生産基盤の弱体化ということが分析されているがこれはどういうことだろうか
まず天候に関してだが、西日本では梅雨前の5月~6月の期間に高温乾燥が続いたことが大きい
当園のある地域では1か月にわたって雨が降らなかった
これにより生理落果が助長され適正量の実が付いていた木では着果過少の状態となってしまった
東日本では前年の秋期での天候不良により樹体の貯蔵養分が少なく花がもともと少なかったという話もある
これによりもともと裏年(果実が少ない)傾向だったところに9月~10月には長期の長雨が重なった
着果が少ない状態で雨がこれほど多く降れば果実がどんどん肥大し、ミカンの規格としてちょうどいいMサイズやLサイズのミカンは少なくなり、需要の少ない2Lや規格外の3L以上のミカンが多くなり市場に供給されるミカンが極端に少なくなったと思われる
残念なことに温州みかんではほかの果実とは違いあまりに大きいサイズになると糖度が低くなるため規格外の大きさのミカンは市場では取引されない
和歌山~静岡では春先の落果はそれほど深刻ではなかったようだが秋季に台風が直撃したために痛み果が多く発生して生産量を落としたようだ
みかんはかつては日本の果実消費量の一位だったがその座をバナナに明け渡して久しい
過去300万トンあった生産量も80万トンまで落ち込んでいる
価格も長く低迷し、雇用や機械化による大規模化も難しいため後継者への世代交代が進まず生産者の平均年齢が10年間で10歳上がったといわれるほどである
その園地の多くは50年ほど前にみかん全盛だった時代に植えられた老木がほとんどである
昨年のような悪環境でも樹齢の若い木は比較的着果が安定していたことを考えると各産地で園地更新が進んでいれば昨年のような大不作にはならなかったのかもしれない
しかしみかんは樹齢が長いことの引き換えに新たに苗を植えてから少なくとも5~10年程度経たないと経済的な生産量にならない
後継者が居ない農家にとっては大規模な改植を実施することは難しいだろう
また、このように未収益期間が長いことは新規就農でみかんを作る農家が少ないことの原因でもある
植え付けた年に収益の見込めるイチゴなどや、2年程度である程度経済的な量の収穫のあるぶどうなどが選ばれるのは仕方ない
昨年が大規模な不作であった以上、本年はおそらくミカンの生産量は多くなるだろう
となると、みかんは表年、裏年を繰り返す性質があるため平成31年度産のミカン生産量はかなり少なくなることが予想される
生産者としては昨年のような状況を繰り返さないためにも本年度の管理が重要になってくる
しかし、次世代の生産者が育つような構造的な生産基盤の不安定化が解消されなければ今後も突発的な大不作が起こる不安は残されたままとなるだろう